西園寺美紀ちゃんからのメッセージに手が震え、スマホを落としそうになった。
「助けて!星の海で乱暴されそう!」
返信している暇などなく、私はスマホを掴んで長屋から飛び出し、タクシーを攔まえて星の海へ向かった。車中で何度か美紀ちゃんに電話したが繋がらず、不安がつのるばかりで手の震えが止まらない。
誰だ?卓也か?それとも前から下心を持っている小泉賢人か?
車から降りると、私は真っ直ぐに店内へ駆け込んだ。美紀ちゃんの安否が頭を占め、危険に遭遇する可能性など考える余裕もなかった。探し回って、ようやく扉の開いた個室で彼女を見つけた。
「美紀ちゃん、乱暴されるとか言ってたけど……」
ソファに座っていた西園寺美紀が立ち上がり、私を中へ引っ張り込んだ。
「そうなのよ!こんな真面目な私を無理やり賭け事に誘うんだから、これって立派な強要でしょ?」
「……」
彼女がこんな方法で私を騙したとは思わなかった。さらに不愉快だったのは、深沢知之までいたことだ――卓也や木村拓海とトランプをしていた。
木村拓海と深沢知之の隣にはそれぞれ女性が座り、卓也の隣は空席で、西園寺美紀も彼のそばには座っていない。
美紀ちゃんが私を中へ連れて行くと、深沢知之は一瞥しただけで再びカードへ目を落とした。その目は冷たく、まるで他人を見るようだった。隣の女性が頻繁に身体を寄せてきても、拒みはしないが、反応も一切示さない。
「お姉さん、来たね」木村拓海が声をかけた。
深沢は煙草をくわえたまま、手札だけを見つめている。
「もうすぐそうじゃなくなるから、適当に呼ぶな」
胸が締め付けられる。美紀ちゃんが私と深沢の間を行き来する視線を訝しそうに見ていたが、やがて突然笑い出した。
「なるほどね。だったらちょうどいいわ。今夜は思いっきり楽しんで、明日には手続きを済ませて自由になろう。次の幸せを探すのよ」
わざとらしい言い方だったが、私はそんなに割り切れない。美紀ちゃんは私を座らせて、一緒に遊ぼうと言った。
「ルールがわからないの」
「そんなの気にしないで!簡単よ、運任せで頭も使わないし。お金じゃなくて飲み物で勝負しよう、酔うだけのことだし」
美紀ちゃんは軽く言ったが、深沢の前で酔うのは避けたかった。
「そうだな、飲み物で勝負だ。怖がるなよ」深沢は笑っていたが、目には笑みがなく、親しげな口調には距離感がにじんでいた。
卓也と拓海が時折深沢の表情を窺う中、彼は淡々としていたが、頬が赤く染まり、かなり飲んでいるようだった。
隣の女性が挑発的な目で私を見ると、胸がざわついたが、仕方なくゲームに加わった。
初心者は運が強いと言われる通り、私の負けは少なく、ビールを二杯飲んだだけだった。一番負けたのは深沢知之だ。彼は潔く飲み干し、隣の女性が注ぎ、時にはグラスを口元に運んでも、一切拒まなかった。
「深沢さん、お酒に強いんですね」女性は媚びるように言う。
深沢は本当に酔ったようで、女性の腰を抱き寄せた。女性は調子に乗って彼の胸に飛び込んだ。私は必死に手札を見つめたが、女性の甘えた声が耳に刺さる。
一ゲーム終え、私は突然立ち上がった。
「トイレに行ってくる」
洗面所で冷水を顔に当てていると、美紀ちゃんが入ってきて言った。
「アカリ、バカなこと考えてるでしょ?深沢知之はわざとあなたを苛つかせてるのよ」
鏡に映った自分を見つめながら、胸がざわついた。
「たとえ苛つかせてたとしても、愛してる証じゃない。ただ振られた側に見られたくないだけ」
美紀ちゃんは言う。「よく考えてよ。深沢と別れたら、次はどうするの?まさか哲也みたいなクズとよりを戻すつもり?」
鏡に映る水滴まみれの自分の顔を見て、私は笑った。
「そうよ。もうすぐ復縁するわ」
美紀ちゃんは目を見開き、私を強く押した。
「何言ってるのよ!絶対にそんなバカなことしないで!」
私は苦笑して首を振った。
「迷ってなんかいない。むしろ目が覚めたの」
本当に復縁するわけではない。ただそれを口実に、深沢知之との関係を完全に断ち切ろうとしているだけだ。
洗面所を出ると、壁にもたれる深沢知之が目に入った。美紀ちゃんは察しが良く、先に去りながらウインクしてくれた。その暗示はわかっていた。私も去ろうとしたが、深沢が長い腕を伸ばして壁に押しつけた。
「楽しかったか?」口元に薄笑いを浮かべ、酒の匂いが混じった息がめまいを誘う。
俯いたまま黙っていると、彼は顎を持ち上げた。顔を上げた時、意外にも彼の表情は平静だった――嵐の前の静けさのように。
「まだ足りないな。さあ、もっと刺激的なことを教えてやる」そう言うと私の手を握り、バーから連れ出した。
「もっと刺激的」という言葉に不安がよぎったが、逃げられない。店を出ると、彼は私を車に押し込み、すぐに運転席に乗り込んでエンジンをかけた。
「酔ってるのに運転なんて、正気?」信じられない思いで見つめた。
彼は振り返り、冷たい笑みを浮かべた。
「どうした?怖いのか?安心しろ、酔ってなんかいない」
落ち着いた口調とは裏腹に、スピードは決して落ち着いていなかった。アクセルを踏むたび、車は流れの中をかき分け、街灯が光の帯となった。
「深沢知之!止めて!」恐怖で叫んだ。
彼は無視し、唇を結んだまま前を見つめ、スピードは落ちない。
街を抜けると、車は山道へ入った。連続するヘアピンカーブでスピードを落とさず、カーブのたびに車体が浮く感覚だった。山頂で止まった時、私は吐きそうなくらい目が回っていた。
深沢はハンドルに手をかけ、涼しい笑みを浮かべて私を見た。
「どうだ?刺激的か?」
「正気を失ってるの?」まだ鼓動が早い。
彼は笑い出し、突然近づいた。
「怖がらせたか?」
「何が目的なの?」睨みつけると、彼は突然足をまたいで私の膝の上に座った。足が痺れる。後頭部を固く掴まれ、距離が詰まる。口元に浮かべた悪戯っぽい笑み。
「俺が何をしたいか、わかってるだろ?」
次の瞬間、彼は乱暴にキスした。息を奪われる。
抵抗しようとしたが、彼の手が私の頭を動けなくする。攻撃的で罰のような力。シートを倒され、私は後ろへ押し倒された。
「妻よ、数日触れてなかったな」嗄れた声が耳元で誘惑的に響く。
「深沢知之、ダメ」かすかな理性で胸を押す。
彼は妖しく笑った。
「何がダメだ?まだ離婚してない、お前は俺の妻だ」
胸が痛むほど見つめた。
「でも、私と一緒にいる目的は純粋じゃない」
「お前も同じだろう?」深沢の笑みの奥に冷たさが浮かび、背筋が凍る。
突然、スマホが鳴った。手を伸ばすと、深沢が奪い取った。ちらりと「哲也」という文字を見ただけだった。
スマホは無造作に放り出される。
片手で私の頬を撫でながらキスし、もう片方の手が下へ伸びる。
「お前も会いたかったんだろ?」その言葉に恥ずかしさが爆発した。
こんな自分が嫌だった。なぜ彼の前では、体がいつも正直になるのか。すぐに理性は霧散し、この瞬間だけは彼と共に溺れたいと思った。
彼のシャツのボタンはいつしか外れ、完璧な筋肉のラインが露わになっていた。一瞬たりとも目を離せないほどの迫力だ。
狭い車内には、私たちの声だけが響いていた。おそらく最も狂おしい夜となった。
終わった後、彼は息を荒くして私の上に伏せていた。私も動く気力は残っていない。彼がスマホを取り上げた時、画面がまだ光っていることに気づいた。
「藤原先生もそんな趣味があったんだな。他人の情事の音を最後まで聞くなんてな」