目次
ブックマーク
応援する
3
コメント
シェア
通報
コード:アーク ~全滅の記録から始まる攻略戦~
コード:アーク ~全滅の記録から始まる攻略戦~
雨宮徹
ゲームゲーム世界
2025年07月17日
公開日
1,060字
連載中
人類滅亡の引き金となった未知のウイルス。 その構造を解明しなければ、ワクチン開発は不可能だ。 科学者たちはウイルス構造を“ダンジョン形式”に落とし込んだ仮想空間を作り出した。その名は『コード:アーク』。 クリアすれば構造は解明される──だが、攻略できるのは同時に三人まで。 全滅すれば、後に残るのは前任者たちの不完全な「攻略日記」のみ。 そして今日、新たな三人がログインした。 限界まで追い詰められた人類最後のゲームが、いま始まる。 陣内……医学者。別のウイルスのワクチン開発に携わった経験を持つ。ゲーム内でのジョブはセージ。 甲斐……探検家。ゲーム内のジョブはレンジャー。 ???……プロゲーマー。ゲーム内でのジョブはアサシン。

第1話 人類を救うためのログイン

 人類は、負けかけていた。いや、正確にはもう負けている。世界人口は三分の一以下にまで減少し、死者は毎日増えるばかりだ。


 ──原因は、たったひとつのウイルス。


 感染すればほぼ確実に死ぬ。抗体は作れず、ワクチンも存在しない。なぜなら、誰もこのウイルスの構造を解明できていないからだ。あまりに複雑で、あまりに不規則。まるで、何かの「迷宮」だとさえ言われた。


 そんな状況に、あるプログラマーが答えを出した。「ウイルスが迷宮なら、迷宮として攻略すればいい」と。


 彼女が開発したのが、仮想空間『コード:アーク』。そこには、ウイルスの遺伝子構造がダンジョンとして再現されているという。


 しかし、このゲームにはひとつだけ問題がある。全滅すれば、二度と現実世界には戻れない。クリアしない限り、プレイヤーの意識は仮想世界に囚われ、眠り続けるだけだ。


 そして、彼女──開発者自身も、消息不明となった。『コード:アーク』の世界に、最後にログインして以来。


 ※ ※ ※


「……ついに、来ちまったか」


 視界が開けた時、俺はすでにゲームの中にいた。現実じゃない。ここは『コード:アーク』。人類が開発した、ワクチン開発のための「ウイルス構造探索ゲーム」。


 そして目の前には、二人の男がいた。


 一人は、鋭い目をした痩身の青年。服装はアサシン風、腰のナイフがいかにも手慣れていそうだ。


「おいおい、学者先生か? いかにも頭でっかちな顔してるな」


 いきなりそんなことを言われた。


 もう一人は、無骨な男。全身を覆う軽装鎧とロープやら道具を満載した、まさに冒険者といった風貌。


「喧嘩腰はやめとけ、ゲーマー」


 どうやら、彼らも同じく現実から引き込まれた人間らしい。


「名前は?」


「陣内。医学者だ。ワクチン開発の研究をしてた」


「俺は甲斐。レンジャーってとこだな」


「ゲーマーだ。プロだった。名前は要らねえ、コードネームで呼べ。アサシンでいい」


 無愛想なゲーマーと、落ち着いた探検家。そして、俺。


 三人、強制的にパーティを組まされた。ログアウトはできない。クリアするしか、現実には戻れない。それが『コード:アーク』のルール。


 視界に、メニューが浮かび上がる。そして──その中に、「攻略ログ」の文字。


「これが……前任者の日記、か」


 数十人分の記録が並んでいた。メモもある。誤字もある。欠損もある。


「だが、これは全部“死んだ連中のログ”だ。信用しすぎたら、俺たちも死ぬ」


 アサシンが吐き捨てる。それでも、進むしかない。


「よし、始めよう。ウイルスの迷宮攻略を」


 俺たちは歩き出した。人類を救うために。自分たちが生き延びるために。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?