SNSの総フォロワー数は20万人越え、そこそこ知名度のあるストリーマーの『ritリット』として活動する俺。今日もいつも通り配信の告知を行い、最近発売されたホラゲーの準備をする。機材を繋ぎ、動作を確認する。待機画面を作り、配信を始める。
待機画面にした状態で音量や描写などについて細かい設定を行う。早速同接は一万人を超えた。コメントも流れはじめ、なんとなく目についたものを読んでみる。
[ホラゲー楽しみ✨]
[りとくんホラー耐性あるからなー、、、りとくんが叫ぶくらいの期待してる!]
[初見です。切り抜きから来ましたー]
大体初見も数十人から数百人は来てくれるようになった。ストリーマーとして活動しはじめてもう少しで3年が経つ。最初は大学生活のために上京して、趣味の一環として始めた配信生活。トーク力やゲームスキルがあるわけでも無かったが、ホラゲーへの耐性と、有能なリスナーさんの面白い切り抜きによって人気が出始めた。この活動名もあまり英語表記で呼ぶ人はいない。大体が「りっとさん」か、「りっとくん」、「りっと」とリスナーに呼ばれる。親しみを込めてなのか「りとさん」や「りとくん」、「りと」と呼ぶ人もいる。まぁ、俺自身もかっこいいからという理由で英語表記にしたし、本名であるわけでも雷人らいとのローマ字で書いた時の「raito」の頭文字をくっつけただけの名前だから思い入れがあるわけでは無い。調べてみたら音楽用語で遅くという意味もあるらしい。せめてこの名前に意味をつけるなら周りより遅くてもいいから自分の好きなことをし続けるみたいなことだろうか。ただ、この名前で浸透し始め、呼ばれるようになってからは愛着も湧いてきた名前だった。
「あーあー、音入ってる?入ってたらコメントして!」
リスナーたちにしっかりと声が届いているのかチェックしてもらう。なんだかんだでリスナーという存在は偉大だし、感謝してもしきれない大切な人たちだ。
[聞こえてます!]
[入ってるよー!]
「ありがとー!」
「では、ちょっと蓋開けるから待ってね。」
この界隈では蓋、もしくは蓋絵というものがある。視聴者に余計なものが映らないように、そして伝えたい情報などが分かるように待機画面などで使われるようなイラストや画像のことを言う。俺は配信によってその画像を変えるというところがお気に入りであり、こだわりでもある。配信の内容がわかりやすく伝わるように一から自分で作っていてとても楽しい。
蓋を開けてホラゲーのタイトル画面が映し出される。黒い画面にスタート、設定、セーブと書かれたボタンがそれぞれあり、その上にタイトルと開発者名が載っている。全部が赤文字で書かれているのが余計に恐怖心をくすぐってくる。
[雰囲気ある!]
[結構怖そう……]
「みんな見えているかな?とりあえず、軽くこのゲームについて説明するね!」
「一応俺も初見だからネットで調べた情報とか、ゲーム買う時の説明欄に書いてあったこと言うね!」