elle:おい聞いてくれよアミア
aMa:おうどしたイルゥ!!!!よ
elle:エルな
elle:どんな巻き舌してんねん。ってか、『!!!!』が付いてるせいで酔っ払いの奇声にしか見えないんだわ
elle:ま、それはそれとして、俺めっちゃ面白そうなこと思いついたんだが
aMa:な、なんだってぇー!?
elle:と、いうわけで、俺たちの仲は5年で終わりということで
aMa:さらばだイルゥ!!!!よ
elle:引き止めてくれよ
elle:んでさ、なんかもうすぐ【FLOW】のアジア大会の予選あるらしいじゃん?
elle:そこで俺が久々に無双したらおもろそうじゃね?って思ってさ
aMa:あーね
aMa:んでもって、デュオ大会だから俺と一緒に出て欲しいと
elle:そゆこと
aMa:俺はいいけど、エル戦えんのか?
aMa:このゲームもう3年くらいやってねーだろ
elle:いや実はな、1ヶ月くらい前からサブ垢でまたやりだしてな
elle:今チャプターいろいろおもろいしやりてーなって思って
aMa:そゆことか
aMa:ま、俺は誰ともアジア大会出るつもりなかったし、そういうことならいいぜ
elle:マジで? さんきゅー
aMa:まぁ俺もこのゲームやるの2年ぶりなんだけどな
elle:マジかよおい
elle:までも、アミアならできるだろ
aMa:まぁな
aMa:てか、俺は本垢でやるのか?
elle:もち
elle:『夢の最強タッグ、まさかの復活!?』って騒がれてー
aMa:下心丸出しでウケる
elle:バレたか
そのメッセージが送信されると、elleこと俺──
シンプルな仕組みながら奥深いこのゲームは、リリースされてから5年経った今も人気が途絶える気配は無い。
それどころか、「プレイヤーが増えてるのではないか?」と疑問を持つレベルだ。
ゲーム起動のロードを終えると、「アカウントを選択してください」という文言と共に、2つのアカウントが表示された。
左には、世界で俺しか持っていない、【FLOW初代世界王者】のバッジがついたアカウント──『elle』。
右には、初心者同然でなんの特徴もないアカウント──『Ray』。
俺は3年ぶりに左のアカウントからログインし──ようとすると、ピロンと通知音がなったのでサブモニターに視線を移した。
aMa:あと10分で始まるらしいから通話するぞ
elle:おけ
elle:あでも待って
elle:トイレ行ってくるわ
aMa:早めに済ませとけよ……俺も行ってくるわ
elle:人のこと言えねーじゃねえか
俺はゲーミングチェアから立ち上がり、トイレに向かった。
その後、ついでに水分補給やらなんやらも済ませてから、自室に戻った。
すると、サブモニターはちゃんとついていたが、メインモニターの画面は真っ暗になっていた。
「そうだった。ログイン画面で置きっぱにしてたら、スリープモードになるんだっけか」
独り言のように呟きつつ、俺はメインモニターを再び起動しFLOWにログインしつつ、Descodeに目をやった。
aMa:おいエル
aMa:あと2分で始まるぞ?
aMa:まだか?
aMa:ねえねえねえねえねえねえねえねえ
aMa:おーい
……うむ、完全にゆっくりしすぎたな。
elle:ごめ、生命活動してた
aMa:何カッコつけてんねん
aMa:っていうか、それはもう絶妙にダサいだろ
aMa:それよりはよ通話こい
「こんこんきーつね」
『なに元気に著作権引っかかりそうなことしてんねん。急げって!』
「ちょ待って、手だけはちゃんと動かしてるから」
『マジじゃん、クリック早すぎだろ』
カチカチカチカチ、とコンピューターを急かすようにクリックする。
『おい無双するならマジで時間無いって!!』
「ごめんて、もうすぐ行けそう」
お、やっとロードが終わった──!!!
そして、俺は慣れた手つきで