======== この物語はあくまでもフィクションです =========
ここは、『重の国』。
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
俺には聞こえる。殺してくれ、と。
どこの次元でも聞こえている。
跳んで来たのは、ある家の書斎。
どこかに似た風景だ。
この家の主の心を読んだ。
「防犯装置の故障とは思えないが、プロの強盗さん?」
射すくめる様な視線を感じた俺は、今回も『南極ボケ』を封じた。
すぐに見破り、論破するだろう。
男は、元皇帝製紙の会長で、今は世評を趣味にしている。
政界にも実業界にも精通し、常識も持っている。
「まるでSFだな。」元会長井桁弘氏は呟いた。
「詰まり、次元を渡り歩き、趣味で『世直し』をしている超能力者で、自称・異次元の殺し屋か。ゲームみたいにアイテムで召喚するんじゃないんだ。」
「超能力者は当たっているかも知れないが、召喚ってモンスターみたいだけどな。」
「失敬。褒めた積もりだったが・・・俺の心が読めて、心の中の『助けてー』が聞こえるんだ。」
ここでも、国の代表の我が儘に翻弄されているらしい。
「見越した訳じゃないだろうが、『重の国』憲法や諸々の法律を作った時、独裁を止める手立てを打っていなかったらしい。今の話だと、他の次元でも似たり寄ったりだ。まあ、並行世界だからな。それなら、どこかに『お手本次元』があるのかな?跳ぶ時に時間軸がずれたみたいだよ、えと・・・何て呼べばいい?」
「そうだな。渡瀬、でどうだろう?」
「渡瀬ね。昔、好きだった役者の名前だ。それで行こう。どうせ次元を跳んだら、俺の記憶から消えるんだろうが。」
そうでもないが、黙っておいた。
彼のPC台に連動して映っているディスプレイを見て、『ずれている』意味が分かった。
今日は、8月15日。敗戦の日だ。
英霊を偲ぶ式典で、この『重の国』の行儀大臣である伊島実は、用意されたプリントを放って、『アドリブ』?で世界の人々に向けて、爆弾発言をした。
「80年前の戦争は『ひとえに』『重の国』の責任であり、国民は永代に渡って償う必要がある。ここに、補償金と、『移民・在住の外国人優先』を約束しま・・・。」
その時、会場と、TV中継で観ている視聴者は、度肝を抜かれた。
何十発という銃弾が、伊島の体を貫通したからだ。SPは間に合わなかった。
救急車が呼ばれたが、生きて戻って来る可能性は皆無だった。
警察の鑑識は苦労した。
TV中継は、中断された・・・かに見えたが放送された。更に、生の映像は、SNSで全世界に拡散された。SNSに国境はない。
この行事の時、井桁は後援会で講演をしていた。
講演会の講演が終った時、控え室に戻った俺は、井桁に言った。
「国葬儀を行わないようにした方がいい。それが出来るのは、あんた1人だ。」
そして、俺は、壁をすり抜けた。
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
今回は、特別だ。各人の『ご先祖様』へのサービスだ。
そして、次の世界に跳んだ。
―完―