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第5話

「何故、夜の学校に集まることになってるの?」


「俺に聞かれてもな……クラスの奴がメールしてきたからだろ」


 クラスの一人から、クラス男子全員に一斉メールが来た。


 内容は「今日の夜九時、クラスメイト男子は学校の校門に集合」とのことだった。


「神崎に会長も……来てくれたんだな!」


「お前が主催者か……」


「夜の学校は立ち入り禁止のはずなのですが、何の用ですか?」


 家でのんびりしていた俺は当然やる気などなく、ため息をついては面倒くさそうという態度を見せた。紅蓮はというと、校則を守る会長として主催者を叱っていた。


「まあまあ、それはちゃんと説明しますから、こっちに来てくれ!」


「……」


 紅蓮の説教など無視するように、俺と紅蓮の服を引っ張り、皆が集まっているとこに連れて行こうとするクラスの一人。


 紅蓮は俺に助けを求めるように視線を俺のほうに向けてきた。何も言わず、俺のほうを見るときは大抵が助けを求めているときだ。


「とりあえず、此処にクラスメイト全員を集めた理由を聞いてからでもいいんじゃないか?」


「……うん」


 納得した紅蓮と主催者の話を聞くことになった。


「クラスメイトの男子の皆、よく集まってくれた! 俺達はあと半年でこの高校を卒業する。だから思い出作りと度胸試しのため、肝試し大会を開催する! もちろん男だけ集めたのも度胸試しということで、全員一人ずつ回ってもらう。皆、準備はいいか!」


「おー!」


 皆の掛け声と共に思い出作りと男達の度胸試しの肝試し大会が始まった。


「ルールは至ってシンプル。今から地図を配るから、その地図に書いてあるルート通りに歩き、最後に立ち寄る場所にお札があるから、それを手にした者から、元の場所である、この校門に戻って来るというルールだ!」


 盛り上がっている状態で帰るということは、男として度胸がないということだ。

 それこそ、新聞部の標的にされること間違いなし。


「校門の鍵は昼に職員室から盗んできたので、安心していい! さあ、学校へ侵入するぞー! まずは一人目―!」


 一人目が学校の中へと入り、五分経ってから二人目が向かうという形だ。俺は面倒だと思ったが、クラスメイトとの思い出作りだと知ってからは心が躍った。


 しかし、夜の学校は立ち入り禁止。いくら思い出作りだとはいえ生徒の鏡である生徒会長の紅蓮は黙っていないだろうと思い、紅蓮のほうにふと視線を向けた。


「紅蓮。会長として注意しなくていいのか?」


 紅蓮は俺の予想外の行動をしていた。紅蓮は自分の順番が来るまでの時間潰しなのか、携帯のライトを使って読書をしていた。


「クラスメイト男子全員が団結したら、僕でも止めるのは不可能。それにみんな……楽しそうだから」


「……そうか」


 俺はその言葉を聞いて嬉しかった。何故なら、紅蓮が学校の校則よりもクラスメイトの意見を優先したからだ。だけど、紅蓮の身体は微かだが震えているように見えた。


「紅蓮、寒いのか?」


「別に……」


 なんだろう、違和感を覚える。確かに少し肌寒いとは思う。だが、紅蓮の場合は寒いだけで震えているわけではないと思った。


「次は会長と神崎の番だぜ!」


「あ、あぁ。わかった」


「わかりました」


 クラスメイトに声をかけられ、紅蓮との話は中断された。紅蓮が俺の先に学校の中に入った。その五分後、俺も学校の中に入った。


「ルート通りに行って、札を取ってくるだけってこんなにも簡単なんだな」


 俺はホラーやオカルトを一切信じないし、怖くもない。だから夜の学校に入っても別にどうということはなかった。


 俺は校門で俺の先に学校に入った紅蓮を待つことにした。


「神崎、俺たちより出てくるの早いなー」


「神崎は夜の学校に入っても平気なのか?」


「幽霊の類が見えるわけでもないしな……別に怖くない」


 クラスメイトの男子半分以上が札を取ってきては、校門に集まってきた。


 俺はソイツ等とたわいもない会話をしては紅蓮の帰りを待っていた。が、紅蓮以外のクラス全員が校門に集合しても、紅蓮の姿だけはなかった。


「おい、紅蓮はまだ戻ってきてないのか?」


 俺は心配になって、クラスの奴に聞いた。


「え? そういや会長の姿見てない気が……おい、お前達は見たか?」


「いや、見てない」


「僕も見てない。……って、神崎!?」


(まだ戻ってきてないなら、紅蓮は学校の中か!)


 俺は慌てて学校の中へと向かった。


 俺と話している時、紅蓮の様子がおかしかった。妙に震えている気がしたので、寒いかと思った。だけど、あれは怖いものが苦手だっていう前振りだったってことじゃねぇか。


 俺は地図に書いてあるルート通りに行ったが、紅蓮の姿はなかった。


「紅蓮。一体、何処にいるんだよ!」


 そういえば、クラスの奴らが紅蓮の姿を見てないと言った。地図のルート通りに行って誰にもすれ違うことがないなんて、ありえない。


「まさか……」


 俺は地図には書いてないルートを探すことにした。


「紅蓮!」


「冬夜……」


 紅蓮は案の定、地図には書いてない空き教室の隅っこで膝を抱えたまま座り込んでい室の隅っこで膝を抱えたまま座り込んでいた。


「紅蓮。お前、暗い所が苦手だったんだな」


「うん。だけど、暗い所だけじゃない。怖いものも苦手。だから夜の学校なんて幽霊とか出そうで、正直、気が乗らなかった。でも、クラスメイトとの最後の思い出作りだって思ったら……」


「紅蓮」


 俺は震えてる紅蓮を抱きしめ、頭を撫でた。


「紅蓮、俺がついてるから大丈夫だ。一緒に校門まで戻ろう」


「うん……ありがとう、冬夜」


「っ……」


 抱きしめていたせいか、紅蓮の顔が近く、紅蓮の鼓動が伝わって、吐息までかかりそうになった。


 俺の鼓動も急激に早くなった。

 それは、忘れようと思っていた恋心が再び燃え上がった瞬間でもあった。

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