目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
エクスオマジックオーディビリティ
エクスオマジックオーディビリティ
永寝風川
ゲームVRゲーム
2025年08月05日
公開日
3,647字
連載中
エクスオマジックオーディビリティ それは今世界で大人気のバトルゲーム。 厖大な異能・魔法から選び、配られたものを自由に扱い勝利を目指せ!! このバトルに上限はない、判断力、適応力そして想像力。自分のすべてを使うのだ!

第1話「武器とビームとマシンガン」

無機質な白い世界が広がる空間に二人の人影があった。


一人はぼさぼさな黒い髪に、絵文字が書かれた紙を顔を張り付けて、ぶかぶかな黒のパーカーを着込んでいる小柄な男


もう一人は、前髪に銀のメッシュが少し入っている金髪ポニテに、深い紫の瞳を持ち、青を基調としたセーラー服に身を包んだ、日焼けしている女。


その二人は静かに前に浮かぶ画面のボタンを押す、すると白い世界の景色が次々と変わる。森の中。和風な街中。道路の上。荒野。深海。宇宙に浮かぶ魔法陣の上。サイバーパンクな町。ネオン街。古代遺物。そして、広い和室の空間になると、それ以上空間は変化しなかった。

二人の横にお互いの名前がのった青と赤の板が現れぶつかる。


エクスオマジックオーディビリティ


それはいま世界で一番熱い対人ゲーム。ジャンルは没入型格闘VRゲームと言えばいいのだろうか。

このゲームの特徴はお互い膨大な異能の中から2つ選び、残りの異能1つと魔法が3つランダムで配られる。それを組み合わせ文字通り何でも使い戦うゲーム。戦闘中、好きな武器を同時に2つまで手元に召喚でき、さらにカスタム性と臨機応変さが求められる。

もちろん設定で持てる異能の数やランダムかどうか、なども変えられるが今回はデフォルト設定だ。


「おい、ユウガ。お互いに異能は公開するか?」


紫の瞳を持つ女。プレイヤーネーム:シオンがそう目の前の男に聞く。

ユウガと言われた男の顔に張り付いている紙の顔文字が、(^○^)から(一_一)に代わる。


「めんどい、何時も通りでやろう」


「おk」


二人がそういって互いに武器を出す。ユウガは大剣を召還すると、ぶかぶかなパーカーが瞬時に漆黒の鎧に代わり。顔文字が張り付いた紙さえもグレート・ヘルムで覆われる。


一方シオンはマシンガンを召還して、セーラー服から、青いラインが入ったライダースーツに代わる。このゲームでは戦闘が開始されると。プレイヤーが想像した服装になるのだ!ちなみにセンシティブな服装にはならない。しかし制作に関わった人達が許可した。もっと言うと、制作陣の癖である服装は”なぜか”センシティブ判定ではない。

ナンデダロネ。


「「バトルスタート」」


お互い同時にそう言い放つと板が上に上がり。お互いの視界斜め上に表示される。そして試合開始の銃声が大きく鳴り響いた。


先に攻撃を仕掛けたのはユウガだった。大剣を大きく振りかぶると野球のボールのようにシオンの顔に向けて直線状に放たれる。

しかし、シオンはそれを首をひねることで回避する...がっ。通り過ぎた大剣は向きを変えスピードをそのままに再びシオンに向かう。


「めんどうねっ」


シオンは選択した異能を発動する。シオンを包み込むように素早くロボットが現れ、ぎりぎりで大剣を受け止める。まぁ、ロボットと言っても。機動戦士のようなものではなく。鉄男のハ〇クバスターに見た目は近い。

描写を戦闘に戻すと、いつの間にか急接近していたユウガが懐に潜り込んでいた。シオンは操縦席にあるボタンを二つ押すと、シオンは滑るように外に出されロボットが大爆発をする。

頬に一滴の汗がたれると瞬時にマシンガンを二丁持ちする。そして文字通りの爆音が響くが爆炎の中に向けて、マシンガンで探るようにタップ撃ち。

簡単に言うとトリガーにかけている指を、押したり離したりして短く区切るように撃ち続ける。

すると銃弾が金属に当たる音がして、そこをさらに撃っていると出てきたのはまさかのタワーシールド。畳をえぐりながら接近するタワーシールドにシオンは体を横に転がすように回避するが、回避先に現れた投げナイフが耳をかすめ、血のエフェクトが飛び散る。


「っ...!!」


予想外のダメージに視界が切られた耳に向かう。その隙に煙幕から飛び出してきたユウガ。しかし次の瞬間ユウガの足に針が刺さる、トラップ魔法だ。痛みで止まった瞬間、瞬時にユウガの頭に鉛球を叩き込むが。突如背中に痛みが入り体の力が一瞬抜け、マシンガンを地面に落とす。どうやら投げナイフ背中に刺さったらしくガクッとHPバーが減る。ホーミングするのを頭から抜けていた。予想外の連続で混乱した頭を瞬時に切り変えるように深呼吸。


「はぁ...ふっ」


再び異能を使いロボットに乗り込む。これである程度の攻撃は装甲で守れる。そして彼の異能と魔法的に苦手であろう近接戦に持ち込もうと、ロボットの腕をエネルギーソードに変えて突っ込む。ユウガの大剣とシオンが乗り込むロボットのエネルギーソードが火花のエフェクトを散らす。

ロボットの片腕をミニガンに変えてユウガに向けて乱射しダメージを与えるが機体に電流が流れショート。どうやらユウガの雷属性の魔法らしい。

シオンはガチャガチャとコックピットの中をいじり、反応がないことを確認すると出入口を思いっきり蹴る。固くビクともしない。


「ま...ずっ..」


突然機能が回復して前の映像が映し出される。そこには準備を終えたユウガが大剣を天井にかざしていた。

ここで説明をする。このゲームにおいてももちろん必殺技がある。黄色のゲージをマックスまでためると任意のタイミングで発動可能。必殺技な内容は...それこそプレイヤーの想像力に代わる。今持っている魔法・異能。そのすべてを、思いつくまま発動する。上限はない。


ユウガが大剣をシオンが乗るロボットに向けると和室の天井が壊れ綺麗な夜空と、青い満月がユウガを照らし、様々な刃物が光背のようにユウガ背に現れる。

漆黒の鎧が、背に並ぶ刃物が、青い月光により怪しく光る。

シオンは息を飲んだ。神々しく、そして邪悪な雰囲気に。もし、八岐大蛇を実際にみたらこのような感想を抱くかもしれない。あぁ、とても...素晴らしい恐ろしい...と。


そんな感想が浮かび、背筋が凍る。

戦闘中、お互い動かないという静かで異様な雰囲気に、シオンの頬を汗が再びすっとなぞるように落ちた。


「秘儀『刃追千蛇ハオイセンジャ』」


その言葉に意識をハッとさせたシオンは二つ目の異能を発動する。しかし同時に刃物達がシオンの乗るロボットの目の前に接近していた。


金属音はない、ただエンジン音を奏で畳の上を爆走するという、このゲームでしか見られないであろうシュールな光景がそこにはあった。シオンの二つ目の異能。変形。これによりロボットをバイクに変えたのだ。

後ろからは色とりどりの蛇が這うように、魔法をまとった刃物達がシオンを追いかけてくる。

シオンは気持ちがよかった。髪は靡き、体に伝わる風圧。刃物が近づいてくる緊張感。その二つでこの状況に興奮し顔がほんのり赤くなる、目を見開く。


さらにスピードを上げ早く早く。バイクを斜めにして急なカーブをしてユウガに向かう。前方には無数の刃物。


「いっくぞぉぉぉぉ~!!」


シオンが魔法を使うバイクの前方に氷魔法を変形させたバリア。そしてマシンガンでバイクにダメージが入らないように、撃ち落とす。通り過ぎに体に傷ができダメージエフェクトが散る、しかし気にしない。

一方ユウガは必殺技を使い切ったものの。タワーシールドを目の前に出して異能で雷魔法を付与し蹴り飛ばしたが。シオンはにやりと口角を上げると、前方のタワーシールドを飛び台のように使い空へと舞う。もちろん、バイクも無事ではなく壊れてしまい空中で大爆発を起こし、シオンをさらに高く空に上げる。準備は整った。


シオンは必殺技を発動する。前方に現れたいくつもののボットが変形し、一つの巨大なレールガンに代わる。ユウガは逃げようとするが自分を囲うように針が設置される。まるで、ターゲットを示すポイントのように。


「ちっ...」


ユウガは舌打ちをした。抵抗する手札がない。


「充電完了!目標確認!器機怪々とはまさにこのこと!!さぁ化学の奇妙さにおののけ!!『懲伝磁訪ズパーダマグネンス・ビジット!!』」


シオンがそう言い放つと、それが発射される。唸る轟音は逆に静寂に近く、電気エネルギーの柱が。いや、神の腕の如く。ユウガを掴むように。その身を焼き焦がさんとする。


勢いよく体力ゲージが削れる。しかし悔いはない。この戦いが楽しかったからだ。

グレート・ヘルムが外れる。顔は見えないが口は微笑んでいた。


「今回は、負けか」


ゲージがなくなりシオンの名前が叫ばれる。


〖シオンwin!〗


そのボイスと共に白い空間に戻る、シオンとユウガの服装も元に戻る。説明し忘れていたが、


「ユウガ~乙ー」


「負けたぁ~」


ユウガの顔文字が(´・ω・`)になっている。

慰めるように、シオンはユウガの肩に顎を乗せる。


「もう一試合するか?」


「ん~」


ユウガの顔文字が(=_=)になり顎に手を当てる。そして、シオンの顔を見て提案する。


「よし、シオン。初めて乱戦場所に向かおう」


「んぉ?初めてじゃね?ネットのやつらと戦うの」


「まぁ、俺たちの実力気になったとこだっただろ?」


「お互いで戦ってばっかしだったたからな。よっし、行くかぁ!」


シオンの返事に、ユウガは乱戦ルームのボタンを押した。

そして、ここから。二人の日常はリアルでもネットでも変わっていくことを二人は知らない。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?