熾音
時は西歴2300年。
SETI(地球外知的生命体探査)が実を結び、惑星間交流が当たり前になった大宇宙時代。
亡くなった婚約者との子を育てるシングルマザーのヒナタは、星間事故によって幼い双子と共に文明のまったく異なる惑星に漂着してしまう。
そこで出会ったのは、常に布で顔を隠す貴族の青年・宝珠。
彼は偽りの婚約関係を条件にヒナタたちを庇護することになり、そこから歪ながらもほんのりあたたかで賑やかな同居生活が始まっていく。
しかし、そんな生活は惑星を巣食う“歪み”と呼ばれる異常現象にヒナタを巻き込み、唯一、その歪みの究明ができる調律士《コードネア》としての運命と過去を狂わせる。
母でありながら魔性で奔放なヒナタと、四大貴族冬家嫡男として願われたにも関わらず、その異端な容姿ゆえに忌み子として冷遇され続けた宝珠。
幼い双子を通して始まるぎこちない四人の同居生活の先に、果たして芽吹くものはあるのだろうか。
『偽りの婚約者になるのなら――そなたと子供たちを保護してもいい』
これは、歪みを抱えたふたりが少しずつ“家族”になっていく――
切なくも優しい、異文化幻想譚。
※カクヨムと小説家になろうでも同時連載中です。