「——えっ、……え?」
「何が『え?』だ。胸糞悪い間抜け
恐る恐る目を向けた先。——声が聞こえた発信源に立っていたのは、
彼の姿を瞳に映した瞬間、言葉が詰まる。無論、いきなり声を掛けられた驚愕で言葉を失った、というのもある。だが、彼の容姿を目にした途端、その形貌のあまりの神々しさに
「……神さま?」
まるで
異彩を放つ明眸は、
単に男の容姿に魅入ったか、はたまた尻込みしたかは分からない。しかし、僕の記憶にある神の定義に酷似した彼が、どうにも眩しく見えて仕方がなかった。
そんな純朴な思考が駆け巡る一少年が意図せず零した言葉、それこそが「神様」。
こちらの一言を掬い上げた彼が、次に放った台詞。——それはとても神とは形容し難い、粗野で乱暴で、そして酷く下劣的なものだった。
「——寝惚けてんのかゴミ野郎」
人差し指で
前言撤回、この野郎が神様であるはずがない。真の神が、初対面の人間に正面を切って「ゴミ野郎」と痛罵を浴びせる。そんな低俗な真似が、できる訳ないのである。浮世離れした容姿から、チンピラめいた言動が飛び出るとは、いやはや見た目詐欺にもほどがある。
確かに、呆気に取られたが故に出た僕の失言は、何の脈絡もなかった。何の脈絡もなければ、巫山戯ているようにさえ取ることができたと思う。男が呆れ果てるのにも、頷ける。だとしても、「ゴミ野郎」などと謗られる
男の威圧に
「気持ち悪い奴だな、お前。
普段の自分は、温厚な人種だと自負している。自負してはいるものの、見ず知らずの男にいきなり真正面から漫罵されると、多少なりともカチンと来るものらしい。無礼極まりない不遜な物言いに、こちらを挑発するような男の振る舞いに、意図せず
「そっ、そんな訳ないでしょ!! あーあ、僕の一時の気の迷いでした。この世界にこんな口汚い神が居る訳がない。こんな軽々しく神様だなんて言っちゃ駄目ですよね。全く本物が知ったら『失礼だ』って叱られちゃうな。少なくとも僕の知る限り、神様というお方はもっと上品でしたからね、ええ! 『ゴミ野郎』発言は有り得ない、有り得ないですとも!!」
確かに会遇当初は、彼の張り詰めた空気に物怖じするだけだった。
しかし、面識のない男に、ここまで好き勝手に言われてヘコヘコし続けていられるほど、僕の堪忍袋の緒も丈夫ではない。息も
「大体神様と間違われたことに対して、何で『ゴミ野郎』だなんて酷く罵倒する必要性があるのか。それすら、僕には理解できませんけどね! もし初対面の人間がちょっと
「え、何? 喧嘩売られてんの、俺?
「先に言葉という武器で暴力を振り
その時は正に恐れなんてなかったと思う。ああ言われればこう言う——だなんて、軽いお喋りの応酬がスラスラと出てくる。自分でも恐ろしいくらい大胆な受け答えをしていたものだから、口が独りでに走り出したものとさえ考えた。