第一章 月光の誓い
白い花が敷き詰められた回廊を、シャリーはゆっくりと歩く。
ヴェール越しに差し込む月光が、ドレスのレースと宝石を淡く輝かせ、その姿はまるで月の女神。
祭壇の前で待つライト様は、彼女を見つめたまま、まるで時間が止まったように動けなかった。
「…君が来てくれた」
その声は、優しさと安堵が混じり合った囁き。
司祭の声が静かに響く。
「あなたは、この人を生涯愛し、守り抜くことを誓いますか?」
ライト様は迷いなく答えた。
「誓う。どんな闇が訪れても、必ず君を照らす」
シャリーもまた微笑み、彼の手を握った。
「誓います。あなたが望む未来を、一緒に見続けます」
鐘の音と星空が、二人の誓いを永遠に刻んだ。
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第二章 小さな約束
披露宴会場は、ルナマーレの海を望むテラス付きのホール。
賑やかな祝福の声の中、シャリーはライト様の袖を引いた。
「…ちょっと外に出ませんか?」
夜風がヴェールを揺らし、波音が二人を包む。
「今日、たくさんお祝いをもらったけど…私の一番の宝物は、あなたです」
ライト様はその手に口づけを落とした。
「なら、これから毎日、その宝物をもっと輝かせてみせよう」
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第三章 港町ルナマーレ
古くから「月と海の町」と呼ばれる港町ルナマーレ。
恋人たちが訪れると永遠に結ばれるという伝承が残る。
新婚旅行で訪れた二人は、石畳の通りに並ぶ朝市や小さなカフェを歩き回った。
ある露店で、月の形をした取っ手の深い青の陶器カップを見つける。
「これ、家で蒼月ブレンドを飲むときに使おう」
二人はそのカップを抱きしめるように持ち、笑い合った。
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第四章 蒼月の初夜ブレンド
夜、ルナマーレの海辺の宿。
窓から差し込む満月の光が波を銀色に染めている。
シャリーは小さなミルで、港町で手に入れた豆を挽き始めた。
「今日のために取っておいた、特別なブレンドよ」
カップを手にしたライト様は、一口飲んで微笑む。
「…香りが、君みたいだ」
二人は同じカップから交互に味わい、湯気と月光に包まれながら、静かに夜を過ごした。