高校二年、
仲の良かった友達と離れて、殆ど面識のないクラスメイトたちと馴染めるかはユエの中で問題だったが教室に入るとどこか今までと違う雰囲気に驚いた。
『おはよう。今日からよろしくー。』
教卓の傍にいた女子の一人がユエに笑いかけると他の子たちも同じようにする。
『よろしくね。』
顔を確認しながらとりあえず自分の席に着く。
出席番号で振られた席は窓際の方でユエは机に鞄を置いた。
『お、久しぶりじゃん。』
聞き覚えのある声。隣を振り向くと、背の高い男子がユエを見て笑った。
『うん?ひ、久しぶり?』
彼は席に座ると苦笑いして首を傾げる。
『あ、覚えてないの?俺、
虎二?記憶の隅にあった名前が湧き上がってくる。
中学生の頃の虎二の姿が思い出された。中学校のジャージを着て、短くした髪によく日焼けしたスポーツ少年。
『ああ、虎ちゃん。』
目の前の虎二は中学生とは違い、随分とガッチリとして髪も少し長めだ。
日焼けしているのは変わらないが、左耳のピアスが少し大人っぽく感じられた。
『そう、その虎ちゃんだよ。よろしくな。同じ学校って知ってたけど、同じクラスになって・・・なんか嬉しいよな?』
『うん。あ・・・。』
ユエは周りを見渡して小さな声で聞いた。
『えっと・・・中山君のほうがいい?虎ちゃんって呼んじゃったけど。』
その言葉に虎二は破顔した。
『いいよ、別に。俺もユエって呼ぶし。いいよな?』
『うん。』
前は名前で呼び合っていたが、少し声色の変わった虎二に心臓が早くなる。
とても不思議。
『よろしくね。虎ちゃん。』
『ああ。あ、そういや、あいつもいるよ?』