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第4話



        GH


     砦に住む男 2




「オイ!オイ!」

 背中を何者かが小突くように蹴っている。

 なんとなく感覚でどこかに運ばれて来たことは理解出来たが、とにかく頭が痛い、床に寝転んでいるのにも関わらず、目眩のように身体が自然に揺れているのあ分かる。

「オイ!気がついたか?」

「死んだか?」

「死ぬほどぶん殴ったのか?」

「いや、それほどはやってないはずだけど・・・」

「畜生・・・」

「コイツ、ジャイアントヘッドの手先か?」

「わからん・・・聞いてみないとな」


 「ジャイアントヘッド」という単語を聞くと、アタルの身体は自然と反応し、短い咳払いが出た。

「オイ!気は確かか?」

 気は確かかって?アンタらが殴っておいてその言いようはなんだ。

 アタルは、頭痛による不快感と、目の前にいる者達への不快感で、唸りながら眉間に皺をよせた。

「立ち上がれるか?」

「吐きそう・・・」

 アタルは額に手を当てながら、薄目を開け、問いかけてきた男の方をみてみた。

 二十代半ばから三十代とみられる。神経質そうな痩せ型の男が無表情で、床に転がっているアタルを見下ろしている。

 その横には二十代前半であろう、短髪の大男が立っている。

「痩せがボスで、大男が俺を殴った奴だな」

 などと、それなりの推理を巡らせていると、痩せ型のリーダー格であろう男が、アタルの目の前にしゃがみ、無表情な顔を近づけてきた。


「何処からきた?」

「おれは・・・たかだアタル・・・」

「名前なんか聞いてないんだよ・・・お前はどこから来た」

 アタルは額を押さえながら、半身を起こし、痩せ型の男を寝起きのような表情で見た。


「何処から来たと言われても・・・ここに来る前はのの字坂の、中島浩子って人のとこにいて・・・」


 痩せ型の男は、中島浩子の名前を聞くと、少し表情を強ばらせた。


(中島さんは、会ったこともないみたいに言ってたけど、この痩せと知り合いなんだな・・・)


 アタルは考えながら、ゆっくりと正座をして、もう一度男をしっかりと見つめてみた。

 痩せ型の男も、隣にいる大男も、よく見るとさほど暴力的な人間ではなさそうである。が、二人の表情や動きから、まだアタルに対しての警戒心を緩めてはいないことは、なんとなく理解出来た。


「じゃあ、あの女の手先か?」

「手先?そんなんじゃないけど・・・」


「お前、ジャイアントヘッドを知ってるか?」

 大男がアタルのすぐ後ろに椅子を運びながら言った。

 アタルはゆっくりと置かれた椅子に腰をかけ、もう一度当てつけがましく額に手を当てて見せる。

 すると大男は、鋭い目でアタルを見ながらも、口をへの字に曲げて、多少申し訳なさそうなにため息を吐いた。

「ジャイアントヘッド・・・ってのは、中島さんに会って初めて聞いたけど、ホントは何なんです?」


「あの女の言ってることはデタラメだよ、こっちこれるか?」

 痩せ型の男は、アタルを窓側へ手招いた。

 外を見渡せるはずの窓ガラスは、丁寧に段ボールで目張りされていて、外を見ることは出来ないが、アタルが窓際までヨロヨロとやってくると、ほんの少し窓を開け、外を見るように促された。


 どうやらここはマンションの最上階らしく、長浦港から、横須賀の自衛隊基地や、米軍基地の方角まで見渡せる。


「あそこに大きなタンカーがあるのが見えるか?」


 確かに少し沖合に大型のタンカーが停泊している。

「そして、その少し前に自衛隊の軍艦がとまっているだろ?」

「確かに・・・」

 正確には「軍艦」ではなく「護衛艦」と呼ぶのが正しいようだが、そんな事はこの際どうでもよい。

 その、護衛艦はタンカーより前方というよりも、かなり陸側に停泊しているように見える。


「奴らは俺たちを監視しているんだ」

「えっ?」

 アタルは、我ながら素っ頓狂なこえを上げ、もう一度海の方を見た。

「自衛隊に、監視されてるの?俺たち?」

「自衛隊かどうかは分からないが、あのタンカーには巨大ロボが搭載されている」


「きょ!!!」

(巨大ロボ!コイツら何を言ってるんだ!のの字坂の女より訳がわかんねぇ!!!)


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