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第5話 震える手

私は指示された通りに、ソファに座った。


「では、問題無さそうなので、私は下の階の自分の部屋に戻ります。」


銀髪の男はそう言って、部屋から出て行った。


黒髪長髪の男は、黒のスーツの上着をハンガーにかけると、腕まくりした。

袖口からは、刺青がはっきりと見えた。


「なんだ?

この刺青が珍しいか?


いずれ、俺の全身の刺青を見ることになるだろうけどな。」


意味深な発言をして、しばらくすると、キッチンからコーヒーとココアの香りがした。


男は、私にココアを出し、自分にはコーヒーを置いた。


「飲めよ。

毒なんか入ってない。


今はまだ、な。」


男はソファの背にもたれて、タバコに火をつけた。


あの甘い香りがした。


私は、ココアに手を付けなかった。


カタカタと手が震えているのを隠す為だ。


「…お前、名前は…?」


「…………」


私は答えなかった。


名前を言っても、いい事は無いと直感したからだ。


「ふん。

賢い女は鬱陶しいな。


やっぱり、薬漬けにして、変態金持ちに売り飛ばすか…」


「やよい…


夜に、宵闇の宵で、やよい…


呼ぶだけなら、苗字は必要無いでしょう。」


私は震える手を握りしめてそう言った。


「やよい…ね。

まぁ、いい。


ふん。

強がってる割に手が震えてんぞ?


俺はあかつきだ。」


「…………」


私は無言で暁さんを見つめた。


「確かに、かなりの上玉だ…」


暁さんは、立ち上がると私に覆い被さり、私のあごを持ち上げて、タバコの煙混じりのキスをした。


「…ん…ふぁ…

ごほっ!

ごほっ!」


私が僅かに喘ぎ、咳き込むと、暁さんは面白そうにさらに煙混じりのキスをした。

















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