月光
恋愛現代恋愛
2025年09月23日
公開日
7.8万字
連載中
銀座の三つ星フレンチレストラン「Clair de Lune(月光)」を率いる天才シェフ・御影葵は、誰もが羨むすべてを手にしていた。
華やかなキャリアと、財閥の御曹司である完璧な夫・御影蓮。
完璧な皿と完璧な夫婦——そう見えた夜、葵の前に現れたのは、蓮に親しげに寄り添う女・白鳥麗華。
やがて“たった一枚の写真”が、蓮の独占欲と嫉妬に火をつけ、信頼は音を立ててひび割れていく。
夫の裏切りが孕んだ女の登場によって露わになり、誓いは支配と背信へと変わった瞬間、彼女の輝かしい世界は音を立てて崩れ去る。
仕事にすがり心を凍らせる葵の前に、辛口で知られる美食評論家・星野温が静かに手を差し伸べた。
銀座の一流厨房から鎌倉の海辺へ――。葵は散り散りになった日常の中で、尊厳と夢を拾い集めねばならない。
夫の執着と家族の重圧に翻弄されながらも、彼女は豪奢な牢獄から抜け出し、自らの手で新しい人生を調理することができるのか。
キッチンの熱と夜のネオンのあいだで、葵は“守るべきもの”を選び直そうとしている——。
三つ星の厨房、財閥の檻、仕組まれた微笑と匿名のメール。
愛は所有か、敬意か。銀座の星々の下、月光は誰のために輝くのか。
クレール・ド・リュンヌ。
束の間の夜と星を盛る女。