きなこもち
恋愛現代恋愛
2025年10月16日
公開日
5.5万字
完結済
名門・鷹司家に仕えて十年。
メイドの佐伯美咲は、冷たくも誇り高い若様・鷹司浩介に、誰にも言えない想いを抱いていた。
だがある日——浩介の“初恋の人”が戻ってくる。
その瞬間、美咲の十年は音を立てて崩れた。
「お前は所詮、下賤なメイドだ」
嘲るように放たれた一言で、積み上げた年月も想いも、すべてが無に帰す。
傷ついた美咲は屋敷を去り、故郷で新しい人生を始める。
彼女の手作りソースは全国的なヒット商品となり、穏やかな医師との出会いが、
彼女の心に優しい春をもたらした。
一方その頃——浩介は偶然、美咲が残した日記を見つける。
そこに綴られた想いを知った彼は、悔恨に狂い、すべてを捨てて彼女を探し出す。
雪の夜、彼は美咲の家の前で涙ながらに懇願する。
「美咲……俺が悪かった。帰ってきてくれ……」
けれど美咲は、隣に立つ婚約者の手をそっと握り、微笑んだ。
「あなた、どちら様ですか?」