完璧な夫に忘れられた私、極道のボスが不倫を承知で執着してくる
いちし
恋愛現代恋愛
2025年10月23日
公開日
3.1万字
連載中
昏睡から目を覚ました御堂蓮の最初の一言が、花房桜の心を粉々に砕いた。
「お前誰?妻なんていらん。」
かつて大切に抱きしめてくれたはずの夫が、今はまるで他人のように冷たく接し、桜を追い出すように離婚届にサインをした。御堂家から冷たく追放された桜に、かつて「先生」と優しく呼んでくれた男・黒崎龍司が静かに近づいてくる。
彼は桜の涙を拭い、居場所を提供してくれた。しかし、それは桜が最も弱っている時に仕掛けられた巧妙な罠だった。
「兄貴がお前を捨てるなら、俺がもらう。」
桜が知らぬうちに、療養先の異国で御堂蓮は真実を知る。桜の昔の手紙が、すべての嘘を暴き出す。狂ったように療養院の檻を破り、龍司に抱きしめられている桜の姿を目の当たりにする。
「兄貴、」龍司の笑い声には冷徹な毒が込められている。「今、彼女は俺の婚約者だ。」
暴風雨の夜、二人の男は桜を巡り死闘を繰り広げる。桜が花瓶を手に取って龍司の後頭部を打った瞬間、鮮血と涙が飛び散る。
「あと何度私を壊せば気が済むの?」
それから三年後。秋の紅葉が美しく染まる京都。御堂蓮は桜の前にひざまずき、母の形見の指輪を差し出す。
「残りの人生をかけて罪を償い、君がもう一度愛してくれる日を待つ。」
しかし、影の中で、本来なら刑務所にいるはずの黒崎龍司が歪んだ笑みを浮かべて言う。
「先生、終わってないって言っただろ。」
「一度俺を忘れたなら、一生かけて思い出せ。」