命の恩人を誤って認識したあと、極道の若頭は狂ってしまった
Majo
恋愛夜の世界
2025年11月04日
公開日
4.5万字
連載中
京都の雨の夜、十四歳の朝倉奈穂は、一袋の金平糖で瀕死の少年を救った。
十年後、彼女は京都で悪名高い「悪女」と呼ばれ、あの少年は極道の若頭となっていた。
だが彼は、温柔な義妹を恩人だと誤認した。
彼は義妹に稀世の宝を捧げ、奈穂を植物状態の検事との婚約へと追いやった。
彼は彼女が辱められる様を冷たく見下ろし、自ら家法を執行して鞭痕をその背に刻んだ。
「朝倉奈穂──お前の邪悪さには吐き気がする。」
だが、ある日彼は真実を耳にする。
彼が宝物のように崇めてきた“雨夜の天使”は、実は信物を盗んだただの小泥棒だったのだ。
そして三年間虐げ続けた“悪女”こそが、彼が生涯をかけて守るべきたったひとつの「糖」だった。
——*——
金城徹也の世界は音を立てて崩れ去った。
彼は祠堂で九十九度自らを鞭打ち、血が青石を染めた。
彼は胸に彼女の名を刻み、痛みで贖罪した。
彼は毒をあおり、ただ一度の振り向きを賭けた。
だが奈穂は静かに救急車を呼び、振り返ることなく、
昏睡状態だった夫の、わずかに動き始めた手を握った。
「金城さん──あなたの生き死になど、私には関係ありません。」