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ルール違反の恋人~私の価値、計算できませんよね?
ルール違反の恋人~私の価値、計算できませんよね?
小南栄里子
恋愛現代恋愛
2025年11月05日
公開日
6.4万字
連載中
私の同居人は、超エリート弁護士の秋山先輩。 彼が手渡したのは、分厚い「共同居住規定」のファイル。靴の向きから消灯時間まで、全てに細かいルールがありました。「価値は計算できるもの」が彼の口癖。私はいつも、彼のその冷たい物差しで、採点されている気がしていました。 でも、本当の彼は少しずつ見えていました。私が風邪を引いた時、無言で置いていってくれた風邪薬。深夜の仕事中、いつの間にか差し出されていた温かいコーヒー。ルールに縛られながらも、必死に誰かを想う、不器用で優しい人なんだと。 …だからこそ、あの言葉は余計に突き刺さりました。「君の価値は、計算済みだ」。私の全てを否定するように。私は大阪に旅立ち、彼のいない世界で、必死に前を向いて歩きました。 それなのに、なぜか難事件では匿名のヒントが舞い込み、邪魔な取引先は影で解決されていく。そして遂に、京都の古寺で、彼は跪いて、一枚の「契約書」を差し出した―「白石志保を、秋山曜の人生の、唯一の例外とする」。 あの日、ルールに潰されそうだった私の想いは、ようやく、彼の不器用なルールブックの一番上に、一番大事な一条として刻まれました。

第一話 法廷での初対面

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