夫のために“ろう者”を演じてきた私が得た報いは浮気だった ～ごめんね、赤星さん。実は私、ずっと聞こえていたの
恋愛結婚生活
2025年11月11日
公開日
公開日
6.3万字
連載中
連載中
人気バンドのボーカル・赤星蒼空は、交通事故で突然聴力を失った。
音を失った彼は、世界ごと色を失い、絶望の淵を彷徨っていた。
そんな彼の前で、妻の和泉は静かに手話で伝える。
「私の世界も、同じように静かになったの」
彼を一人にしないために、彼女は“聞こえないふり”を始めた。
すべては、愛する人を守るため――それだけのはずだった。
だが、蒼空の聴力は密かに回復していた。
そして彼はその事実を隠し、かつての音楽仲間であり富豪令嬢の米津紗耶と再びつながっていく。
家では妻の献身を当然のように受けながら、
陰では「正直、あの手話、うっとうしい」と嘲るように紗耶へ漏らしていた。
やがて二人は不倫関係に陥り――
聴力回復を祝うパーティーの席上で、和泉をあざ笑った。
「マジで邪魔。どうやって追い出そうか？」
その夜、帰宅した蒼空が見たのは――
静かに微笑みながらも、氷のような眼差しで彼を見据える和泉。
テーブルの上には、離婚届と、その横に置かれたスマホ。
和泉はゆっくりと立ち上がり、はっきりとした声で言った。
「私の芝居は、これで終わりよ」
第1話 静寂の世界
