婚約者が初恋の相手のために私を平手打ちしたので、私は振り返って豪門の御曹司と契約結婚した
もも
恋愛結婚生活
2025年11月26日
公開日
4.3万字
完結済
雨宮千夏は神宮寺亮介を八年間愛してきた。
しかし結婚を目前にしたある日、彼の元カノにもらったカップを割ったという理由で、彼に頬を打たれた。
「君は永遠に彼女の代わりになれない」
その瞬間、千夏はようやく悟った。自分はただの“初恋の代用品”だったのだと。
別れたその夜、見知らぬ男・柊慎一郎が、最も惨めな彼女にそっと鍵を差し出した。
優しく、穏やかで、礼儀正しく――彼は千夏に、これまで一度も得られなかった安心を与えた。
元彼の執拗なつきまといに、千夏は思わず提案した。
「私と……偽装結婚していただけますか?」
彼は静かに頷いた。
人生はもう十分ドラマチックだと思っていた。
――あの日、高級レストランで元彼に遭遇するまでは。
「千夏、こんな男を選んだのか?ただの貧乏教師じゃないか」
その言葉が終わらないうちに、レストランのマネージャーが深々と頭を下げた。
「柊常務、ようこそお越しくださいました」
神宮寺亮介の顔が真っ青になる。
あの穏やかな大学教授が――柊グループの副社長だったなんて?
後日、彼はバラの花束を抱えてカフェの前で跪いた。
「千夏、俺が悪かった。やり直そう」
千夏は静かに首を振った。
「神宮寺さん、人には……一度逃したら、もう戻らない縁があります」
そう言って彼女は、柊慎一郎の胸にそっと身を預けた。
――あなたは私を“代わり”にした。
でも彼は、私を“世界そのもの”として愛してくれた。