ちよみ さくらい
恋愛現代恋愛
2025年12月01日
公開日
4.6万字
完結済
京の老舗銀細工工房「鈴工房」を継ぐはずだった水谷鈴音は、母の病を機に夢を諦め、東京の広告会社に就職した。しかし待ち受けていたのは、冷酷無比な若松慎司クリエイティブディレクターからの「魂がない」という容赦ない批判の日々。傷つき疲弊した鈴音は、唯一の癒しである銀細工制作の様子をInstagramに投稿していた。すると、いつも優しくコメントをくれる「京都月影」という男性と出会い、次第に心を通わせていく。
一方、若松慎司は三年前の業界スキャンダルのトラウマから、鈴音をライバル社のスパイと疑っていた。しかし、彼女の投稿する銀細工の美しさ、そして彼女の言葉に込められた温かさに惹かれ、「京都月影」として彼女に近づき、やがて心奪われていく。現実では罵倒し、ネット上では愛を囁く―。二つの顔を使い分ける若松の罪深い恋。京都への出張で真実が暴かれた時、鈴音は「さよなら」だけを残して去っていった。
失って初めてその大切さに気づいた若松は、京都に通い、彼女の大切な工房を陰ながら支え、ただただ彼女の幸せを願い続ける。過去の過ちを償い、傷つけた彼女の心を癒すことはできるのか。