私は医者ですが、彼氏には「血の匂いがきつい」と嫌われてしまい、私は振り向かずに財閥の御曹司である機長と結婚しました
Hoshinono
恋愛現代恋愛
2025年12月01日
公開日
5.8万字
完結済
千夏は飛行機の中で母子を救った。
血まみれの姿で出てきた彼女に、彼氏は言った。
「本当に恥ずかしいよ。」
三年間、彼は彼女の仕事を嫌がり、
「人前に出すぎだ」「血の匂いがきつい」と責め立てた。
彼女は彼のために科を変え、進学も諦め、
怯えながら必死に気に入られようとしてきた。
それでも彼は幼馴染を想い続け、
千夏を代わりの女としか見ていなかった。
別れたあと、五年間彼女を想い続けた機長が言った。
「あの日の君の救助する姿は、目が離せないほど美しかった。」
彼は彼女が五年前に何気なく言った言葉を覚えていた。
台風の夜、六時間待ち続けても愚痴ひとつこぼさなかった。
彼は彼女の仕事を支え、「君を誇りに思う」と言ってくれた。
元彼はようやく後悔し始めたが、もう遅かった——。
夏祭りで、機長は皆の前で宣言した。
「彼女は僕の恋人です。」
婚約披露宴で、彼女の幸せそうな笑顔を見て、
元彼は崩れ落ちた。
そして結婚式当日、テレビを叩き割り、号泣した。
橘慎一郎はすべてを失った──愛も、仕事も、尊厳も。
そして千夏は、九条家の妻となった。