婚約当日に婚約者が来なかったので、私は彼の宿敵とそのまま結婚した
もも
恋愛結婚生活
2025年12月02日
公開日
3.4万字
完結済
藤原雪は村上誠を十年間愛してきた。
孤児院から財閥の令嬢へ──
彼を私生児から後継者の座へ押し上げるため、全てを尽くしてきた。
ようやく結ばれると思っていたのに。
婚約前夜、弱々しいふりをしていた彼の秘書が自殺未遂をし、
彼はその夜のうちに大阪へ飛び、村上家全員も海外へ。
誰一人として、婚約式には現れなかった。
彼女は東京中の笑い者になろうとしていた。
酔った勢いで、彼女は橘清一郎に出会う。
「私と婚約してくれませんか?」
冷酷で禁欲的だと噂される財閥御曹司は、静かに彼女を見つめた。
「いいよ。」
「婚約じゃない。結婚だ。」
翌日、婚約式は予定通り行われた。
十台のロールスロイス、数十億円の婚礼品、橘家総出の盛装。
村上誠が戻ってきたとき、
ガラス扉の向こうで、
別の男の隣に立ち、花のように微笑む彼女の姿を見ることしかできなかった。