Kirara
恋愛現代恋愛
2025年12月02日
公開日
4.1万字
完結済
もしある日、自分が“自分自身の代役”だったと知ったら、あなたはどうするだろうか。
桐谷遥は、まさにそんな荒唐無稽な現実に直面した。
交通事故で五年間の記憶を失い、自分が誰なのかも忘れてしまった彼女。
元婚約者に見つけられたものの、彼は彼女を“元恋人”――白石遥という女性の代役として扱った。
彼は冷たく、距離を置き、デートのたびにどこか上の空。
挙げ句の果てに、「お前は彼女の影にすぎない」と言い放つ。
遥は、いつか自分を見てくれると信じ、必死に優しく、慎ましく振る舞い続けた。
しかし誕生日にすっぽかされたことで、ついに決意する——もうやめよう、と。
そうして彼女は橘晴人に出会う。
コーヒーと海風と優しさで“ゆっくり生きること”を教えてくれた男だ。
彼は言った。
「君は誰かの代用品なんかじゃない。君は唯一無二の桐谷遥だよ。」
そして真実が明らかになる——
彼女こそが、白石遥その人だったのだ。
元婚約者が膝をつき懺悔した時には、
もう彼女の心は、どこにも彼のもとにはなかった。