偽物の令嬢は婚約破棄されたその夜、彼女を十年間密かに想い続けてきた財閥の御曹司と電撃結婚する
宇宙カピバラ
恋愛結婚生活
2025年12月05日
公開日
7万字
完結済
星野詩織は二十三年間、星野家の令嬢として生きてきた。
しかし真の令嬢が戻ってきた宴の席で、彼女の身分は公衆の面前で暴かれてしまう。
DNA 鑑定結果が発表された瞬間、養父は冷たく言い放った。
「今日から、お前は星野家の人間ではない。」
幼なじみであり婚約者だった橘誠も、その場で婚約破棄を突きつける。
「両家の婚約は星野家の地位を前提としたものだ。状況が変わった以上、続ける理由はない。」
暴風雨の夜、彼女は酒に酔って見知らぬ男の部屋に迷い込む。
目が覚めて初めて、その相手が東京財界の伝説——
氷室グループ専務取締役、氷室静司であることに気づく。
「この件は、結婚でもしないと収まりがつかない。」
男は淡々とそう告げた。
詩織はそれを契約結婚だと思っていた。
だが——
前婚約者の前で、彼は冷ややかに言い放つ。
「彼女は私の妻だ。橘さん、これ以上付きまとうなら……橘家を東京の商界から消すことも厭わない。」
星野家が赦しを求めて訪ねてきた時も、
彼は電話一本で相手を地に膝をつかせた。
そして彼女は、彼の書斎に大切にしまわれた一枚の写真を見つける。
裏にはこう記されていた。
「2015年4月7日、桜の木の下の君は、私が見た中で一番美しい風景だった。」
——この男は、彼女を十年間も密かに想い続けていたのだ。