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許されない恋と契約結婚
許されない恋と契約結婚
くるりん
恋愛現代恋愛
2025年12月11日
公開日
5.3万字
完結済
 二十歳になったばかりの片岡雪菜は、家の事情により、両親から半ば強引にお見合いの席へと連れて行かれた。  相手は、十歳年上の西園寺拓真。洗練された物腰を持ちながらも、どこか冷ややかな眼差しの男だった。  会話は噛み合わず、沈黙が続くたびに雪菜は胸の奥で小さく身をすくめた。  それでも――この結婚は避けられない。両家の利害が絡み合った結果、雪菜に選択肢はなかった。  やがて二人は、心が触れ合わないまま婚姻届に名を連ねることになる。  そんなある日、買い物帰りの路上で、雪菜は見知らぬ女性に呼び止められた。  淡い香水の匂いを纏ったその女性は、雪菜をじっと見据え、静かに告げる。  「私は、拓真の彼女よ。今もね」  思いもよらぬ言葉に、雪菜の思考は白く染まった。問いただすことも、否定することもできない。ただ、その言葉を胸に深く落とし込むしかなかった。  数日後。雪菜は偶然、カフェの窓越しに拓真と女性が楽しげに食事をしている姿を目撃する。  女性の名は一条あかね――銀行頭取の令嬢であり、拓真の幼馴染だという。  二人の親密な空気は、雪菜が入り込む余地など初めからなかったと告げていた。  (私がいる場所じゃない……)  そう悟った雪菜は、結婚を“契約”と割り切り、拓真との距離を置くことを選ぶ。  同じ屋根の下にいながら、必要最低限の会話だけを交わし、淡々と日々を過ごす――それが雪菜の出した答えだった。  けれど、雪菜の冷たさや無関心さは、思いがけない形で拓真の苛立ちを煽っていく。  雪菜、拓真、あかね。  三つの思惑が静かに絡み合う時――打算から始まった結婚は、予想もしなかった方向へと動き始める。

第1話 二十歳の誕生日と突然のお見合い話

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