10年の片想い、3年の婚約――婚約者に地下の愛人になるよう求められた私は、振り向いて五大財閥の社長と結婚した
ひつひつ
恋愛現代恋愛
2025年12月15日
公開日
4.6万字
連載中
私は十年をかけて、ひとりの人を愛した。
彼は言った——「お前は俺なしでは生きられない」と。
東京の雨の夜。
私は料亭の外に立ち、婚約者の声を耳にした。
「彼女はもう、俺を中心にした生活に慣れている。
俺が桜井美月と婚約したら、マンションを一軒与えて、外で囲っておけばいい。」
その瞬間、私の胸の痛みは、やがて何も感じなくなるほど麻痺していった。
婚約は解消され、桜井家の養父母からも家を追い出され、名前を変え、人生をやり直すことになった。
行き場を失ったとき、見知らぬ男が一枚の名刺を差し出した。
「友人が、ハウスキーパーを探しているんです。」
それが救いになると、私は信じた。
けれど、初出勤の日、私は彼を見た——北条凛冬。
東京財界の伝説。
そして、二年間ネット越しに恋をしていた相手、
“霜降”。
彼は言った。
「二年前から、君が俺のそばに来るのを待っていた。」
「君を傷つける者は、誰であろうと俺の敵だ。」
やがて、元婚約者は破産し、服役した。
桜井家は門前まで来て頭を下げたが、私は静かに断った。
桜井美月は精神を病み、精神病院に入った。
そして私は、二年間密かに私を想い、世界のすべてを差し出してくれたその男と結婚した。