仮面夫婦だと思われていたのに、実は本物だった――偽装結婚の後、財閥御曹司の彼が本気になり始めた
発芽糖めぐ
恋愛結婚生活
2025年12月22日
公開日
3.7万字
連載中
契約結婚の契約書にサインした日、
桐谷綾音は望月光貴にこう告げた。
「三年後、自動的に解除。お互いに干渉しないこと」
彼は淡々と答えただけだった。
「……分かった」
綾音にとって、それはただの取引だった。
彼女は両親が遺した会社を守るために望月財閥の後ろ盾が必要で、
彼は家からの結婚の催促をかわすために、形式だけの妻が必要だった。
――そう思っていたのに。
初日から、彼はその“ルール”を破った。
「自由にするって約束したのに、どうして指輪をはめるの?」
「干渉しないって言ったのに、どうして毎日きっちり迎えに来るの?」
「ただの契約だって言ったのに、他の男が近づくと、どうしてそんな目をするの?」
望月光貴は彼女を腕の中に閉じ込め、低く囁いた。
「……気が変わった」
綾音は、それが彼の一時の気まぐれだと思っていた。
――椎名千夏。
彼の幼なじみである彼女が、ある日、綾音に告げた。
「本気で愛されてると思ってるの?」
「彼があなたに優しいのは、愛じゃない。罪悪感よ」
「十年前、あなたの両親が亡くなった交通事故――望月家も関わってる」
その瞬間、綾音の世界は音を立てて崩れ落ちた。