健康な赤ちゃんだったのに――五回騙されて中絶させられた私の逆転人生~もう二度と会いません、幸せになります
ゆで卵
恋愛結婚生活
2025年12月23日
公開日
2.5万字
連載中
手術室の外から、夫・今城拓海の声が聞こえてきた。
「五人目も処理完了。医者の話じゃ、もう妊娠できない体になったらしいぞ」
友人たちの笑い声。「この『子供を産めなくするゲーム』、最高だったな。西郷美月のあの表情、見ものだった」
麻酔から覚めきらない私の頭に、一つの疑問だけが浮かんだ。
——五人の子供、本当は全員健康だったの?
結婚三年、五度の妊娠、五度の「胎児に重篤な疾患があります」という宣告。中絶手術の度に、夫は私を抱きしめてこう言った。
「大丈夫だよ、美月。僕たちはまだ若い。また挑戦すればいい」
私は自分の体質を疑い、必死に体を整えた。夫も同じように心を痛めていると信じていた。だって毎晩、彼は私と一緒に朝まで泣いてくれていたから。
でも真実は——出会いも、結婚も、妊娠も、流産も、すべてが緻密に仕組まれた復讐劇だった。
私の「罪」は、三年前に善意で彼の婚約者の浮気を義両親に告げたこと。ただそれだけだった。
離婚届を提出した日、ある男性がアメリカから駆けつけた。空港で彼はこう言った。
「美月、十二年待った。もし君がまだ僕を受け入れられないなら、今度こそ本当に諦める」
世良鈴也を見上げて、私はようやく気づいた。
この世界には、無償で人を守り続ける人が、本当に存在するのだと。
ただ、私がそれに気づくまでに、十二年もの歳月が必要だった。