彼氏が初恋と浮気。記憶喪失の私は、御曹司の宿敵を彼氏だと勘違いし、電撃結婚――元カレは後悔してももう遅い
のんのん
恋愛現代恋愛
2025年12月23日
公開日
3.6万字
連載中
レストランの前で、彼女は三時間も雨に打たれ続けていた。
目の前では、彼氏と元カノが指を絡め合って歩いている。
「君だけを愛している」と言っていたはずの男は、彼女の前でこう言い放った。
「俺は一度も君を愛したことなんてない。君と一緒にいたのは、彼女を忘れるためだった」
水瀬千夏は、絶望のあまり理性を失い、ひとりでバーへと向かい、酒に溺れた。
泥酔して意識も曖昧なまま、彼女は宿敵である氷室龍之介を、あの裏切り者だと勘違いしてしまう。
彼に抱きつき、泣きじゃくりながら叫んだ。
「どうして私を捨てたの……?」
さらにありえないことに、事故で記憶を失った彼女は、元彼とのすべての思い出を、その冷酷な御曹司に重ねてしまった。
「龍之介、あなたの大好きなお弁当を作ったよ」
「龍之介……キスしてもいい?」
かつて気の強い野良猫だった千夏が、甘えて離れない子猫に変わっていく姿を見て、
氷室龍之介は――この勘違いに、乗じることを決めた。
やがて記憶が戻り、千夏は恥ずかしさのあまり地面に穴を掘って逃げたくなる。
逃げ出そうとした瞬間、男は彼女を軽々と拘束した。
「逃げるつもりか? もう遅い。君はもう、俺のものだ」
後悔した元彼が復縁を迫る。
「千夏、もう一度やり直そう」
氷室龍之介は冷ややかに彼女の腰を抱き寄せた。
「白鳥さん、彼女はもう“氷室”ですが」
渣男の事業を商戦で徹底的に叩き潰し、豪門の結婚式で、公開処刑のように叩きのめす。
そして彼女は、ようやく気づく。
――記憶は嘘をつくことがある。
でも、心は嘘をつかない。