元婚約者に六回も中絶させられ不妊になった私を、最強の婚約者が救ってくれました~そして元カレは牢獄行き~
ちーの
恋愛現代恋愛
2025年12月24日
公開日
3.3万字
連載中
宮下隼人は、夢にも思わなかった。
いつか自分が、星野葵に「戻ってきてくれ」と懇願する日が来るなんて。
八年前、妹が溺死した。
彼はそのすべての責任を、婚約者だった星野葵に押しつけた。
それから八年。
彼女を六度妊娠させ、六度流産させた。
そしてついに、彼女は二度と子どもを産めない身体になった。
彼女は一生、罪悪感に縛られ、自分の支配下で生き続ける――
隼人は、そう信じて疑わなかった。
――橘慎吾が現れるまでは。
橘家の御曹司。
海運グループの後継者で、優しく、金もあり、しかも一途。
葵に八年間片想いし続け、彼女が行き場を失ったその瞬間、強引に介入し、彼女を檻のような人生から連れ出した。
泳ぎ方を教え、仕事を与え、傷を癒す時間に寄り添い、惜しみない愛で彼女を甘やかした。
隼人が彼女を取り戻そうとすれば――
慎吾は宮下グループを買収し、彼を破産させた。
隼人が彼女を拉致しようとすれば――
慎吾は即座に通報し、彼を三年間、牢獄へ送った。
三年後。
出所した隼人は耳にする。
葵は結婚し、娘を養子に迎え、洋菓子店を開き、鎌倉で最も人気のあるライフセーバーになった、と。
店の前に立ち、花のような笑顔で働く彼女を見た瞬間、隼人はついに崩れ落ち、嗚咽した。
「……ごめん。俺が悪かった。お願いだ、戻ってきてくれ……」
だが葵は、彼を一瞥すらしない。
慎吾の腕にそっと手を絡め、そのまま店の中へと入っていった。