麦狼
SF宇宙
2026年01月02日
公開日
5,723字
連載中
星間連合の辺境で、たった一人――
観測任務という名の左遷を受け、宇宙船に引きこもる観測員アイリス・ヴァル=エリオン。
彼女の仕事は、文明レベルの低い未加盟惑星「地球」を、ただ黙々と見続けることだった。
退屈。孤独。変化のない日々。
干物のように荒れた生活を送りながら、今日も形式的に観測ログを送信する――はずだった。
だが、ほんの出来心で動かした観測装置が、
極東の島国・日本で暮らす一人の少年を映し出す。
藤原蓮。
それが、アイリスにとって**初めて目にする“男性”**だった。
理由はわからない。
名前も知らない。
ただ画面越しに見つめているだけなのに、胸が苦しくなり、視線を外せなくなる。
降りたい。
近くで見たい。
しかし観測者が惑星に降りることは、星間連合の絶対的な禁忌。
違反すれば即座に解雇、研究者資格剥奪――事実上の社会的死。
悩んだ末、アイリスは禁じ手を選ぶ。
「私が降りられないなら、代わりを作ればいい」
自分と完全に同調する五感と感情を持つ、超高精度アンドロイド――
シンクロイザーの建造。
それは無人探査機であり、
同時に“もう一人の自分”でもあった。
調整相タンクの中で目覚めた彼女は、
自らを「藤原理花」と名乗り、地球へと送り出される。
こうして始まるのは、
宇宙から見守る観測者アイリスと、
地上で彼に近づいていく分身体・理花、
そして何も知らない少年・藤原蓮による――
自分で自分に嫉妬する、前代未聞の恋愛観測記録。
これは、
「降りられなかった彼女」と
「降りてしまった彼女」が、
ひとりの恋を巡ってすれ違い、暴走していく物語。