家族の借金を返すため年上と苦しい契約結婚をすることになった――はずだった。……あれ?全然苦しくないんだけど?
水母プリン
恋愛結婚生活
2026年01月04日
公開日
3.7万字
連載中
桜井柚は思いもしなかった。たった一通の契約によって、自分が東京財界の伝説的な人物と結婚することになるなんて。
北川慎一郎――北川製薬の専務取締役、東京大学医学博士。
三十一歳にして莫大な資産を持つ男。
それに対して彼女は、まだ卒業もしていない美術大学生で、料理をすればキッチンを爆発させてしまうような普通の女の子だった。
契約書にサインをした日、緊張のあまり言葉もまともに話せなかった彼女に、彼は穏やかに微笑んで言った。
「怖がらなくていい。たった一年だ」
一年後には、それぞれの道へ。
そう考えれば、とても公平な契約のはずだった。
――けれど、彼女は知らなかった。
ドリアンを食べているところを見つかり、不機嫌そうな顔でそのまま抱き上げられることになるなんて。
雨の夜、どれだけ忙しくても車で迎えに来て、
「どんなに忙しくても、必ず来る」と言われるなんて。
彼女の悪い噂を流した社員を、彼が人前で即座に解雇するなんて。
そして、満開の桜の下で、真剣な眼差しでこう告げられるなんて。
「君の笑顔を守りたい。一生、一緒に」
一年の契約が終わるその日。彼は契約書を破り捨て、片膝をついて言った。
「柚、もう一度始めよう。一年なんていらない。欲しいのは、一生だ」