医師の元夫に復縁を迫られ、祖母を失い精神病院に送られた令嬢――授賞式で暴き、彼を牢獄へ
走るハム将軍
恋愛結婚生活
2026年01月06日
公開日
4.1万字
連載中
桐谷結衣は、貧しい医学生・水野健司と結婚することが、愛の完成形だと信じていた。
仕事を辞め、専業主婦となり、彼を世界のすべてだと思って生きてきた。
――あの結婚記念日の夜までは。丹念に飾り付けた新居で、夫と「恩人の娘」と名乗る女が、裸で抱き合っているのを目にした。
離婚。そして、身一つで追い出された。これで終わりだと、結衣は思っていた。
だが――祖母が危篤に陥り、手術できるのは水野だけだと告げられる。
彼はそれを盾に、結衣に復縁を迫った。
結衣は、頭を下げた。
表向きは、従順で理想的な妻。しかし水面下で、彼女はすべての証拠を集め続けていた。
そして、あの日。
祖母の手術当日、水野は姿を消した。
彼は愛人を連れて実家へ戻り、彼女の父親の「ただの風邪」を診ていたのだ。
祖母は、手術台の上で息を引き取った。
結衣が告発すると、水野は偽造した精神鑑定書を使い、彼女を精神病院へと送り込んだ。
半月後――結衣は、そこから逃げ出した。
医学表彰式。「最も美しい看護師」が、まさにトロフィーを受け取ろうとした瞬間。
結衣はマスクを外し、前へと進み出る。
「――お待ちください」
大型スクリーンが点灯し、すべての汚れた真実が、カメラの前にさらされる。
論文捏造。婚姻中の不倫。学歴詐称。患者の死。違法監禁――。
一夜にして、“医学界の新星”は完全に失墜した。
そして結衣は、代官山に小さなカフェ兼書店を開いた。
十五年間、密かに彼女を想い続けていた幼なじみ――もう一人の財閥家の後継者が、毎日決まった時間にコーヒーを飲みに来る。
「結衣、ずっと待ってた」
今度こそ、彼女は言えた。
「……私も」