浮気された末に元カレの兄の婚約者となり、ベルリン・サミットで首席同時通訳に就任した私
怪物クン
恋愛現代恋愛
2026年01月15日
公開日
3.9万字
連載中
【「お前は俺には釣り合わない」と言った元カレは、すぐに財閥令嬢と婚約した】
水野雫は、自分はきっと立ち直れないと思っていた。
けれど、思いがけず——あの“優しい人”が現れた。
元カレの兄であり、心臓外科医の氷室宗介。
彼は車で彼女を家まで送り、勉強用に本を貸し、彼女が脅されたときには、迷いなく前に出て守ってくれた。
「私の教え子が、私事で学業を乱されるのは望ましくない」
そう言った彼が貸してくれた本は、何年も使い込んだ、自身の大切な蔵書だった。
家まで送るのは、七年前の彼女の住所を今も覚えていたから。
「ついでだ」と言いながら、彼はいつも、彼女が一番必要としている瞬間に現れた。
彼女が理不尽に退職を迫られたとき、彼は言った。「俺が何とかする」
ネットで誹謗中傷を受けたとき、彼は記者会見を開き、堂々と“妻”を守った。
家族が彼女の出自を疑ったとき、彼は静かに言い切った。「釣り合わないのは、俺のほうだ」
ベルリン・サミット首席同時通訳。
国際医療翻訳協会・年間最優秀賞。
世界トップクラスの病院からのオファー——。
彼女は次々と成果を積み重ね、すべての疑念を踏み越えていった。
結婚式の日。
元カレは会場の片隅で、壇上で光り輝く彼女を見つめていた。
その瞬間、彼はようやく悟ったのだ。
――逃した人は、もう二度と取り戻せないのだと。