目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報
渋谷で夫と愛人が同時誘拐された夜、夫は愛人を選び、私が一番大切にしていた息子までそちらについた――なら、孤児になりなさい
渋谷で夫と愛人が同時誘拐された夜、夫は愛人を選び、私が一番大切にしていた息子までそちらについた――なら、孤児になりなさい
SSS
恋愛結婚生活
2026年02月05日
公開日
3.6万字
連載中
誘拐されたその日、犯人は夫に言った。 「妻と愛人、どちらか一人を先に連れて行け」 夫は浅野美咲の手を強く握りしめ、こう答えた。 「彼女は身体が弱い。先に外へ出す」 次に犯人は、息子を指さした。「坊主。お前は誰と行く?」 息子は泣きながら愛人に飛びついた。「美咲おばさんと一緒がいい!」 ――彼らは、振り返りもしなかった。 逃げ出したあと、義母は涙を拭いながら私を諭した。「健一も仕方なかったのよ。美咲さんは妊娠していたんだから」 息子はゲーム機を抱えたまま、不満そうに呟いた。「だってママ、怪我してないでしょ」 夫はさらに当然のように言った。「あの時は緊急事態だった。いちいち気にするな」 その日、私は離婚届に署名し、母の形見である一つの根付だけを持って家を出た。 今、私は剣道場で、女性たちに“喉元を掴まれた時の逃げ方”を教えている。 元夫の会社が倒産し、彼が助けを求めて来た日。 私をかつて匿ってくれたあの男は、黙って竹刀を拭きながら言った。 「道場に、女主人が必要だ。――君、引き受けてくれるか?」

第1話 渋谷の選択

loading