前世の記憶で私の人生を盗んだ彼女は精神病院へ。盗まれた私は、財閥と政界に愛された
はるみ のざき
恋愛現代恋愛
2026年02月28日
公開日
6万字
連載中
岩手の山奥の、崩れかけた家に、一人の女の子が住んでいた。
破れた長靴、野草だけの鍋、そして——誰も知らない、彼女の本当の名前。
村の人たちは言う。あの子は怠け者で、食い意地が張っていて、礼儀知らずだと。
でも、冨田財閥の御曹司・冨田啓は、山道でその子に出会ったとき、なぜか目が離せなかった。その子が言った一言が、頭から消えない。笑いもせず、泣きもせず、ただ静かに、世界の理不尽を見透かすような目で。
同じ頃、「交換生活」という全国放送のリアリティ番組に、もう一人の女の子が現れた。礼儀正しく、愛想よく、誰からも好かれる——奈良亜希子。
彼女だけが知っている。前の人生で、この場所に立っていたのは自分ではなかった、ということを。本来、山の子が手にするはずだった未来を、自分が奪い取ったということを。
だが、剧本(シナリオ)通りにはいかなかった。
白川雛は、何もしていない。ただ正直に生きているだけだ。なのに、財閥の御曹司は彼女から目を離さない。政財界に君臨する天羽家の老人は、彼女の顔を見た瞬間、言葉を失った。声を持たない青年は、初めて会ったその日から、彼女のそばを離れない。
奪われた名前、届かなかった手紙、南極の氷の下で眠る父の最後の言葉。
全ての真実が明らかになるとき、白川雛はもう一つの名前を取り戻す。
そして、彼女の人生を盗もうとした者は気づく——剧本を握っていたのは、最初から彼女自身だったと。