夫の不倫相手が妊娠していた夜、私は離婚届と一夜限りの年下を持ち帰った ~気づけば財閥御曹司に三つ子ごと溺愛されています~
えりな もりした
恋愛現代恋愛
2026年03月02日
公開日
4.5万字
連載中
三十歳の誕生日まで、あと三日。
大場未来が居酒屋の廊下で目撃したのは、十年間信じ続けた男が、職場の後輩を抱き寄せてホテルへ消える瞬間だった。
怒鳴りもしなかった。泣きもしなかった。
ただ、静かに離婚届を手渡しただけだ。
その夜、廊下でぶつかった見知らぬ男が一枚の紙切れを残していった。番号だけが書かれた、名前もない紙を。
未来はその番号を二週間、引き出しの奥に仕舞っていた。
電話したのは、産婦人科の帰り道だった。
「三つ子です」と医者は言った。
受話器の向こう、男の声は静かだった。あの夜と同じように、慌てもせず、逃げもせず。
「住所を教えて」
それだけ言って、翌日には荷物を持って現れた。
細川弘之、二十歳、東都大学二年生。
彼女より十歳年下で、なぜかやたらと腕が立ち、なぜか財布の中身を気にしたことが一度もなく、なぜか彼女の会社の前で当然のように待っていた。
「あなた、何者なの」と聞いたとき、彼はコーヒーを一口飲んで、こう答えた。
「俺のことは、追々わかる」
追々わかった頃には、もう手遅れだった。
財閥の御曹司で、国際投資家の息子で、気がついたら三つ子の父親になっていた男は——それよりずっと前から、彼女の「帰る場所」になっていた。
三十歳、離婚済み、三つ子持ち。
それが、未来の人生で一番幸福な章の、出だしだとは思っていなかった。