早稲田中退の私が財閥家のベビーシッターになったら、いつの間にか子どもの母になり社長の妻になり、老夫人の最愛になっていた件
Wanwan
恋愛現代恋愛
2026年03月02日
公開日
3.4万字
連載中
世田谷・成城。名門・一色家の門は、容易に外部の人間へ開かれることはない。
だが、ベビーシッターの川島澪だけは例外だった――資質を買われたからではない。夜泣きの止まぬ赤子が、彼女の腕に抱かれたときだけ、嘘のように静まったからだ。
最初にその存在に目を留めたのは、一色家の大奥様・照子。
直筆の短い言葉を温かな食事の盆の下に忍ばせ、澪が眠るころ、そっと枕元へ置いた。
次に声を上げたのは、社長の母・一色静。
「十年ぶりに、朝まで眠れました。あの子の提案を取り入れてからです」
公の場で、はっきりとそう告げた。
三番目は五歳の朔。
彼が初めて「パパ」と口にしたのは、澪が考えた遊びの最中だった。
最後に名を呼んだのは、三代目社長・冬真。
誰もいない庭で、初めて敬語を外し、まっすぐに彼女の名を呼んだ。
そして、生後三か月の陽向は、最初の日から答えを知っていた。
彼が身を預けるのは澪の腕だけ。ほかの誰にも、視線さえ向けようとはしなかった。