極秘結婚一年、夫は別の女に十三回ネクタイを結んだ――壊れかけた私を支えたネト友は五年待った隣の財閥御曹司
水母プリン
恋愛結婚生活
2026年03月02日
公開日
4.7万字
連載中
宮本澄花は、一年間だけの隠れた妻だった。
挙式もなければ、指輪もない。黒川家の姓を名乗ることさえ許されなかった。
職場では「宮本澄花」として働き、家に帰れば「黒川澄花」として振る舞う――そんな二重の生活。
その一方で、夫・黒川玲司はSNSのトレンド欄を、家が決めた政界の令嬢とともに賑わせていた。
離婚届を提出した日、玲司は彼女が拗ねているだけだと思っていた。
だが、役所の窓口で職員が淡々と情報を入力し始めたとき、ようやく気づく。
彼女は本気なのだと。
受理証明書を受け取り、澄花は小さく頷いた。
「……これで終わりです。」
三か月後。
玲司の縁談は破談となり、グループの財務危機がトレンド一位を占めた。
そして彼女は、月城美術館の灯りの下に立っていた。
「月城様のパートナーです」と紹介されながら。
玲司は会場の隅に立っていたが、誰も彼に気づかない。
係の者が無言でコートを手渡しただけで、見送る者もいなかった。
いつでも振り向けば戻ってくると、そう思っていた女は――
すでに別の男が五年かけて空けていた場所に、静かに立っていた。
黒川玲司が後になって知る。
あの隣人の姓は、月城。
名門・月城家の御曹司だった。
第1話 彼は彼女の目の前で、別の女のボウタイを直した