「新しいママが欲しい」と言った息子の願い、叶えてあげます。〜夫の愛も母親の座も義姉に譲って、私は私の幸せを掴む〜
Applepie
恋愛現代恋愛
2026年03月09日
公開日
6,050字
連載中
結婚して5年。祈里(いのり)は、いつの間にか一ノ瀬家で「家族」ではなく「家政婦」として扱われるようになっていた。
夫の瞳に彼女の姿は映らず、息子は口を開けば彼女を疎み、拒絶する。
運命の歯車が狂ったのは、ある誕生日の夜。
祈里は目の当たりにした。夫が義姉を愛おしそうに背後に庇う姿を。
そして耳にした。息子が放った「新しいママがいい」という残酷な言葉を。
用意した贈り物は無惨に壊され、あろうことか夫と息子は、偽善を振りまく義姉に謝罪しろと彼女を責め立てる。
――プツリと、何かが切れた。
渾身の力で放った平手打ち。その乾いた音とともに、彼女は悟った。
この家にはもう、私の居場所などどこにもないのだと。
「望み通り、三人で幸せになればいいわ」
彼女は未練をすべて捨て、二度と振り返ることなく家を飛び出した。
その後、義姉は悪事が露見して身を滅ぼし、泣きながら許しを乞う。
かつての夫と息子は、ボロ雑巾のように這いつくばり、涙を流して縋り付いてきた。
「行かないでくれ」と、物乞いのように哀れな姿で。
復縁を迫り、祈里の手を掴もうとする元夫。
だが、その手は一人の男によって冷徹に遮られた。
「ねえ、愛する妻よ。その『汚らわしいゴミ』は、さっさと片付けてしまおうか?」
重なる指先。祈里が振り返った先には、自分を真っ直ぐに見つめる瞳。
今度こそ、本当の幸せが彼女の隣に立っていた。