F1チャンピオンを策略で手に入れたと思ったのに、私が策士のつもりだったのは――御曹司の彼にしてやられただけだった
Mochi-Chi
恋愛現代恋愛
2026年03月11日
公開日
2.2万字
連載中
ジュエリーデザイナーの五十嵐紗良は、一目である男に恋をした。
日本初のF1ワールドチャンピオンであり、レーシングクラブのオーナー、葛城悠生。
25歳、タトゥー、無造作な髪、天才的な自信と圧倒的な傲慢さをまとった男。
紗良は、恋におぼれる人々がいかにみっともなくなるかを、あまりにもよく知っていた。
だから、自分なりのルールを決めた――恋は技巧と尊厳をもって近づくべきだ、と。
彼女は自分がそれを実行できていると思っていた。
一目惚れした瞬間、感情を押さえ込んだ。
会員カードを作り、同じミントタブレットを買い、すべての「偶然の出会い」を計算した――
決して踏み込みすぎず、決して取り乱さず、完璧なタイミングで現れ、完璧なタイミングで立ち去る。
手帳には明確な作戦があり、プライベートメモには戦略が記されていた。
彼女は親友に言った。「愛は、自分を愛する人のもとに流れる」――と。
自分はただ、ひとつのゲームを仕掛けているだけだと思っていた。
しかし――
彼が199本のバラを贈り、「君は奇数が好きだろう」と言ったとき。
展覧会で「ついでに」現れ、口実までもが初めて出会ったときとそっくりだったとき。
サーキットで彼のマシンがガードレールに迫る瞬間、椅子の手すりを握り、顔が少しずつ青ざめたとき。
彼を抱きしめ、肩に顔を埋めて、思わず口にした――
「大好きです」
その瞬間、彼女はようやく理解した。
仕掛けた局も、盤面も、本物だ。
そして、その中で翻弄される自分自身も、また本物だということを。
紗良は精密に計画を立て、彼の心を動かしたつもりだった。
だが、彼は最初からすべて知っていたのだ。