京都の名門御曹司が禍津神!?新婚初夜に「近づけば死ぬ」と契約書を渡されたのに、泣きながらベッドに入れと懇願してくる~
千霊ちか
恋愛結婚生活
2026年03月16日
公開日
3.3万字
連載中
御影玲央に嫁いだ初日、彼は私に一通の『別居契約書』を差し出した。
契約書とは別に、『生活上の注意事項』が添えられていた。触れるな、書斎に入るな、雷雨の日は俺から離れていろ。
彼は屋敷でいちばん遠い離れに寝泊まりし、家族で温泉旅行に行ったときも、私の目の前で部屋の鍵をかけた。誰もが言った。御影社長の結婚は、神社の石灯籠より冷たい、と。
私もそう思っていた。――あの日までは。
うっかり彼の指先に触れた瞬間、彼がいつも使っている湯のみがその場でひび割れた。外では晴れているのに雷鳴がとどろき、激しい雨が降り出した。
夜中に高熱を出した私が目を覚ますと、枕元にはひとつの「快癒」の御守りが置かれていた。まだ彼の気配が残っている。
祭りのくじで私が「大凶」を引いたとき、彼は何も言わずそれを取り上げ、いちばん高い厄除けの枝に結びつけた。そして自分の引いた「大吉」を私の手のひらに押し込んだ。
証拠を握って問い詰めに行った私が見たのは、彼の首筋と手の甲に浮かび上がった、人ならざる暗金色の紋様だった。
彼は赤い目で打ち明けた。
「俺は普通の人間じゃない。不幸を呼ぶ存在だ……君を遠ざけていたのは、巻き込みたくなかったからだ」
私はその場で別居契約書を破り捨てた。
その後、金婚祝いの宴のダンスフロアの中央で、彼は人前で私の髪に口づけた。かつて私に「もっと良い相手がいるのでは」とほのめかした取引先に向かい、私の手を引いたまま静かに告げる。
「彼女は私の妻です。お気遣いには及びません」
さらに後日、私たちはそろって「大吉」を引いた。朝の光が差し込む台所で、彼は私を腕の中に閉じ込める。私が「神社の古い倉庫をギャラリーに改装したい」と思いつきで言うと、彼はただ一言だけ返した。
「空間設計は俺がやる。資金もプロジェクトも、全部通す」
私は笑って言った。「すっかり妻に弱い人ね」
彼は顔を寄せて口づけ、あっさり認めた。
「うん。君の言うことだけ聞く」