「結婚してくれ」と、ようやく彼のプロポーズが届く3分前、私は治療を諦めた~彼が霊安室で布をめくった瞬間、すべてが遅すぎた
きなこもち
恋愛現代恋愛
2026年03月24日
公開日
3.7万字
連載中
杉森絵茉には、誰にも打ち明けていない三つの秘密がある。
一つ目――余命は三ヶ月。
二つ目――その診断書を胸に、彼女は毎日、憎んでやまない元恋人の向かいで花を売っている。
三つ目――死ぬ前に、彼にただ一つだけ頼みたいことがある。
「私の遺体を引き取ってほしい」と。
崎本奏司が成功を収めて故郷に戻ってきた日、絵茉はテレビ越しに彼の顔を見た。
眉骨に残るあの傷は、彼女がつけたもの。
鎖骨の下にある円形の痕は、彼が残したもの。
憎しみを武器に三年間も傷つけ合ってきた二人が、再び同じ街に立つことになった。
奏司は復讐のために帰ってきた。
一方、絵茉はただ静かに終わりを待っている。
彼が知らないことがある。
花屋を警察署の真正面に構えた理由。
彼女が飲み続けている薬の、本当の意味。
そして――
「結婚しよう」というあのメッセージを、なぜ彼女が最後まで既読にしなかったのか。
霊安室で白い布をめくるその瞬間まで、彼はまだ間に合うと思っていた。