突然辞めた家政婦が、最後に私の手に握らせた紙切れに「逃げて。毎日飲ませているのはサプリメントじゃないから」と書かれていた
ぽん
恋愛結婚生活
2026年03月30日
公開日
2.6万字
連載中
結婚して四年目。
仕事も、友人も、気がつけばすべて失っていた。
夫の悠人はとても優しい。毎朝、必ず白いカプセルを手渡し、微笑みながら「君の体のためだよ」と言う。
綾芽はずっと、その笑顔こそが愛だと信じていた。
ある日、三年間一度も休んだことのなかった家政婦の美代子が、突然辞表を差し出した。
綾芽が引き止めようとしたその瞬間、美代子は震える指で彼女の手首を強くつかみ――何も言わず、ただ一枚の紙切れをその手のひらに押し込み、振り返らずに走り去った。
その紙切れはコートのポケットの中で、丸三か月ものあいだ眠り続けていた。
「逃げて。毎日飲ませているのはサプリメントじゃないから」
その一行を読んだ日から、綾芽の「平凡な結婚生活」は音を立てて、少しずつ崩れ始める。