取り違えられて十八年、母に「実の親は貧乏でろくでもないから帰って苦労しろ」と追い出された私~実の親は兆円規模の財閥でした
Kumo-Kumo
恋愛現代恋愛
2026年04月15日
公開日
3.1万字
連載中
彼女は、やり直した。奈緒も、やり直している――だが奈緒は、それに気づいていない。
橘麻衣は、前世で虐げられて死んだ記憶を持ったまま、奈緒が家に戻ってきたその日に目を覚ました。
前世の彼女は、「実の親は貧乏でろくでもない」という嘘を信じ、養家に残った。
そして奈緒に、すべてを奪われていった。友人も、機会も、評判も――最後には命さえも。
だから今世。
奈緒が口を開くより先に、麻衣は立ち上がり、バッグを手にしてその場を去った。
実の両親を探し当てて知ったのは――彼らが東京でも指折りの財閥だったという事実。
奈緒が周到に用意した偽情報は、地面に落ちて音もなく砕け散った。
だが、麻衣に感傷に浸る暇はない。
今世の奈緒は、さらに手段が容赦なかった。
ほつれた服を送りつけ、業界のチャンスを横取りし、メディアのアカウントを買収して長文を流し、「偽の令嬢」というレッテルを彼女に貼り付ける。
世間の前で恥をかかせ、男の前で価値を落とし、家の中で居場所を奪う――それが奈緒の狙いだった。
――だが。
麻衣は入学初日から、すべての証拠を集めていた。
一つひとつの誹謗も、すべての仕組まれた罠も、日時も出所も揃えて、四十三件。
フォルダに収め、ただその時を待っていた。
奈緒が勝ちを確信した、その瞬間――麻衣はすべてを一斉に叩きつけた。
味方は四方向から同時に動き、奈緒はその日、事務所を失い、養父の信頼を失い、築いた人脈をすべて失った。
堂島礼二。
東京でも屈指の名門に連なる男でありながら、普段は表に出ない人物。
その彼が、数十人の集まる場で初めて麻衣の隣に立ち、ただ一言だけ告げた。
「桂木さん、どうぞ続けてください」
――その一言で、彼がどちらの側に立ったのか、誰もが理解した。