主婦の日記が企業機密だった!?彼はその夜、パリまで妻を追いかけた
Shigure Ao
恋愛結婚生活
2026年04月22日
公開日
2.9万字
連載中
高橋家を去るとき、旧姓に戻った早川詩織が持っていたのは、たった一つのスーツケースと、母から受け継いだ3%の株式だけだった。
かつて、彼女の細やかな気配りは当たり前とされ、その商才は「主婦」という肩書きの下に埋もれていた。元夫の雅人は、自分が失ったのは、ただ静かな裏方の管理役に過ぎないと思っていた。
――だが、彼女が去った途端、料亭の歯車は狂い始める。
彼女の残したノートに頼ってようやく重要な顧客をつなぎ止めたとき。
そして国際見本市で、スーツ姿の彼女が流暢なフランス語で会場を魅了し、フランスの会長からオリーブの枝を差し出されるのを目の当たりにしたとき――
彼はようやく悟る。自分が失ったのは、どれほどかけがえのない存在だったのかを。
家族会議の場で、彼は初めて彼女のために古参たちと激しく対峙する。
だが彼女はすでに、株主であり功労者として冷静にその場に立ち、改革案を可決させていた。
空港での別れ際、彼女はただ一度だけ、別れの抱擁を交わす。
彼は言った。「気をつけて。」
その後――
彼は京都で百年の家業と、二人の息子を守り続ける。
そして彼女は、パリの澄んだ空の下で、早川詩織としての、たった一度きりの一年の冒険を始めるのだった。