令嬢の私、展覧会で表向き完璧な婚約者とその後輩学妹との「魂の共鳴」を美術史の恥柱に晒す
OOWU
恋愛現代恋愛
2026年05月06日
公開日
3.2万字
連載中
誰もが言う。衣笠杏奈は羨望の的だと──家柄、容姿、そして完璧な婚約者・高倉直人。だが、彼女が知ったのは、その「完璧」の下にうごめく無数の虱(しらみ)の存在だった。
自分のものではない真珠のイヤリング、深夜に届く曖昧なメッセージ、ホテルで濡れた髪を浴衣で彼に向かって歩く若い後輩、そして彼の身にまとわりつく甘すぎる栀子の香り。越えてはならない境界のたびに、周囲は「誤解」「紳士の振る舞い」「後輩の憧れ」と説明した。居心地の悪さを感じても、両親を含む周囲は「大らかに」「家同士の体面を守るべき」と諭すのみだった。
だが、息が詰まるような透明な壁の中で、杏奈は沈黙を破る決意をする。疑惑も証拠も、冷たい雨の夜もすべて、「越境」という名の美術展に鍛え上げる。完璧な仮面を自らの手で剥ぎ取ったとき、冷静に支えてくれた盟友・修寺昌樹は手を差し伸べる。
「思いのままに表現して。あとの圧力は僕が片付ける」
世間体の犠牲から、新たなルールを定義する女王へ――杏奈の反撃は、今、始まった。