神崎家から追い出された後、私は古い茶碗を修復して国宝級キュレーターになった
Akari
恋愛現代恋愛
2026年05月14日
公開日
3.9万字
連載中
遠山茜はかつて、関西の名門・神崎家の無口な養女だった。
十年間、他人の庇護のもとで慎重に生き、唯一の心の拠り所は“兄”悠真からもらった草編みの蚂蚢だった――最初の温もりの記憶。
しかし、慈善晩餐会で、悠真の婚約者が“不注意”で唯一の礼服に赤ワインをこぼす。
周囲の視線が注がれる中、かつて自分のために蚂蚢を編んでくれた男は、冷淡な敬称「遠山さん」で距離を置いた。
母の命日、ただ墓参りをしたいだけの彼女に、彼は告げる。「美咲こそ未来の女主人だ、受け入れることを学びなさい」
やがて彼は“お前のためだ”と理由をつけ、十年住んだ家からの退去を命じた。
心が灰のように死んだ茜は東京を去り、母の形見の古びた茶碗だけを持ち帰った。
数年後、東京国立新美術館。文化庁長官自らが、若き文化の旗手・遠山茜に表彰状を手渡す。
その頃、神崎悠真は経済誌で、彼女の笑顔と、自分の家業「鶴乃屋」の業績警告を同時に目にする。
そして雪の夜。京都の町屋の前に立つ彼は、肩に降り積もる雪を払いながら、ただ一言――
「よくやった。そして俺は……値しない」