苺マシュマロ
恋愛現代恋愛
2026年05月27日
公開日
3.6万字
連載中
鈴原綾は、体裁の整った政略結婚によって、幼なじみへの報われない恋心に終止符を打った。新婚の夫・高橋征一郎は完璧で理性的な男。彼は結婚後すぐに「寝室は別にしよう」と冷たい取り決めを持ちかけた。
綾にとって結婚とは、協力であり、演技だった。そして、夫が恩師の娘に向けるさりげない優しさを目の当たりにするたび、胸の奥に小さな痛みが積もっていく。彼女は結婚指輪を外し、引き出しの奥へしまった。「念のためだ」と差し出された安産のお守りも、彼の心には別の誰かがいるという“事実”も、静かに受け入れた。
――あの夜までは。
深夜、偶然開けてしまった書斎の鍵付き紫檀箱。その中には、彼女の過去八年間の人生の欠片が、丁寧にしまわれていた。最も古い写真の裏に残されていたのは、鋭く力強い字。
「今日、绫に出会えた」
それは、彼女が利害一致の結婚だと思っていたものが、実は彼の八年にわたる静かな片想いから始まっていた証だった。
震える声で問い詰めた瞬間――いつも冷静沈着で、一切隙を見せなかった男は、初めて彼女の前で、無様なほど取り乱した。